覇権は誰の手に…タクシー配車市場が突入した“戦国時代”の行方

勝負は短期決戦の可能性も

 タクシー配車サービスを提供する各社の競争が激化している。ディー・エヌ・エー(DeNA)や日本交通グループのほか、外資勢でも米ウーバー・テクノロジーズ、中国の滴滴出行(ディディチューシン)などが参入し、各社2020年をめどに全国展開する方針だ。すでに車両を提供するタクシー会社の奪い合いや運賃割り引きキャンペーン合戦が起きている。トップの座を争う“戦国時代”に突入した。

 DeNAは18年末、スポンサー企業と組んでタクシー運賃を無料にするキャンペーン「0円タクシー」を都内で実施した。ユーザーはDeNAの配車アプリケーション(応用ソフト)「MOV」で配車を依頼し、乗ったタクシーで広告動画を見るだけで運賃が無料になる。日清食品がスポンサーとなり、車内でカップそばを配布した。乗車距離や時間で料金を払うのではなく、移動する間に交通広告を見ることを代価とするビジネスモデルだ。

 ただ、「0円タクシー」を先に仕掛けたのはディディの日本法人、DiDiモビリティジャパン(東京都港区)だ。一定の条件はあるが、何度乗車しても50%割引や初乗り料金相当が無料のキャンペーンを展開した。日本に参入して半年程度のディディだが、大阪地域のタクシー事業者12社と提携するなど急速に存在感を高める。「赤字覚悟でアプリの普及を進めている」と、競合他社の関係者は舌を巻く。

 ディディとは違い、攻めに慎重さが見られるのがウーバーだ。ウーバーは事業の柱としてきたライドシェア(相乗り)が世界中でタクシー業界から反発が巻き起こるなど苦い経験がある。そのため、融和的にタクシー業界との関係を構築する戦略を打ち出す。国内はまず、名古屋地域を中心に配車サービスの提供を開始。サービスの品質を重視し事業を進める。

 各社にとって、ビジネスモデルやサービスの品質だけでなく、車両の確保も重要な課題だ。ソニーやタクシー業者などが共同で設立した「みんなのタクシー」は、18年度中の配車サービス開始を目指す。ただ車両を提供するタクシー7社のうち、東都自動車(東京都豊島区)と日の丸自動車(同文京区)の2社が離脱を決め、DeNAに合流した。

 今後、地方のタクシー会社に対する車両の囲い込みや地域での“陣取り合戦”の熾烈(しれつ)さが増す見込みだ。今は各社が得意とする地域ごとにサービスを展開しており、運賃の無料化キャンペーンなども台数や時間帯は限定的。だが、DeNAの江川絢也スマートタクシー事業開発部長は「19年までに勝負が激化する」と分析する。

 さらに、日本は技術革新でサービスが急速に浸透するかもしれない。キャッシュレス決済の導入や人工知能(AI)の利用が進んでいない日本のタクシー業界は、通常の進化段階を飛び越して一気に最先端の技術に到達する「リープフロッグ現象」が起きるかもしれないためだ。

 勝負は短期決戦になる可能性があり、どの企業が業界に変革をもたらすかが決め手となる。タクシー配車のプラットフォーマーを目指す戦いの火ぶたは切って落とされた。
(文=渡辺光太)

日刊工業新聞2019年2月4日

  

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