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JR九州の新周遊観光列車、「寝台備えず夜は下車して宿泊」の狙い

2020年度内にも投入
JR九州の新周遊観光列車、「寝台備えず夜は下車して宿泊」の狙い

計画している周遊型観光列車の車両は787系電車を改造する(787系、鹿児島本線)

JR九州は2020年度内にも、周遊型の観光列車「九州一周特急(仮称)」を投入する。沿線の観光地に停車しながら、3―5日程度かけて九州を一周する。「簡易版のクルーズトレインにはしたくない」(首脳)との考えで寝台は備えず、夜は下車して市中の宿泊施設に泊まる。停車する駅の地元自治体や観光団体と連携して、2次交通や観光オプションを設定し、新たな交流の創出や九州外への魅力発信を狙う。

 計画している周遊型観光列車は、これまでもJR九州で多くの観光列車を手がけてきた水戸岡鋭治氏がデザインを担当する。概要が固まり次第、今春にも設計を本格化させる見通しだ。デザイン案は年内にも公表する。

 車両は、かつて特急「つばめ」にも使っていた787系電車を改造する。両数や収容人数などは未確定ながら、全席をグリーン車とし、一部個室も備える構想だ。JR九州の観光列車では初の“電車”であり、基本的には鹿児島線や日豊線、長崎線など交流電化区間を走行する。

 定期列車としての運転を想定しているが、停車駅や運行ルートは未確定。「どう活用してもらえるかは地域次第だ」(首脳)としており、意欲ある地域とともに魅力づくりに取り組む考え。沿線には有力観光地も多く、夜間停車駅では、宿泊施設の需要が一定程度見込まれることから、地域間で停車駅の誘致合戦なども予想される。

 ファミリーやシニア層、訪日客などあらゆる利用客への訴求を計画。区間乗車の利用客やツアー客なども想定しており、現在、座席の販売方法や旅行商品の提案方法など詳細を詰めている。JR九州は観光列車を「D&S(デザイン&ストーリー)列車」と称して、各線で展開し、鉄道需要や地域観光資源の創出につなげている。
日刊工業新聞2019年1月31日

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