2019年は“経費精算のデジタル化”が加速する?
コンカー三村真宗社長インタビュー
働き方改革の推進などを背景に、企業における経費精算のデジタル化が浸透し始めている。2016年には、領収書に関する帳簿などの電子データによる保存を認めた電子帳簿保存法(電帳法)の改正による規制緩和で、スマートフォンで撮影した領収書の画像を用いた経費申請が可能になった。スマホアプリを用いて経費申請ができるシステムを企業に提供する米Concur(コンカー)は、これを追い風に日本国内での販売を拡大している。企業の導入状況や反応、今後の展望などについて、日本法人の三村真宗社長に話を聞いた。
-電帳法改正から約2年がたちました。スマホで撮影した領収書の画像を用いる経費精算システムの導入状況について教えてください。
19年1月7日時点では、62社がコンカーの領収書電子化システムを稼働している。さらに、400社以上がシステムの稼働に向けて準備を進めている。18年は規制緩和で導入企業の数が増えたが、19年以降は運用企業の数が増えることでサービスの認知度が高まり、普及につながる見ている。
領収書の電子化は、間接業務に割かなければならない時間や労力の大幅な削減につながる。その他にも、大量の領収書を保管する手間を省く、数字の改ざんや入力間違いを防ぐなど、企業にとってメリットは多い。
-領収書の電子化をさらに推進する上で課題はありますか。
現状で認められているのは、紙の領収書をデジタルで処理する“A2D(アナログからデジタル)”の申請のみで、まだ紙の領収書が必要とされている。領収書の発行から処理までデジタル上で完結する“D2D(デジタルからデジタル)”の段階まで引き上げることが理想的。実現には追加の規制緩和が必要だ。19年の通常国会で審議が見込まれている「デジタルファースト法案」での実現に向けて、働きかけを進めている。
-新たな機能やサービスの追加は考えていますか。
請求書の取り扱いや処理についてもデジタル化を進めていきたい。領収書と請求書という、経理部門にとって大きな負担である2つの法定帳票をどちらも電子化する意義は大きい。
また、現在JR東日本やタクシー会社などと協力しながら、コンカーの経費精算システムと交通系ICカードの連携を強化している。ICカードを使用した瞬間に経費の申請が完了するシステムを、20年以降にリリースできるように開発を進めている。
-キャッシュレス文化の浸透にもつながりそうです。
キャッシュレスの浸透は日常生活における消費の観点から語られることが多いが、業務に関する支出の方がなじみやすいと思う。利用履歴が残ることで、経費の不正利用の抑止にもつながるのではないか。
-中小企業向けの提案に力を入れています。
22年には全体の半分を中堅・中小企業向けビジネスで占めたい。そのために経営資源をかなり投入している。専門の営業部隊の設置や廉価版の製品の提供で、16年は全体の4%程度だった中堅・中小企業のビジネスが、18年には22%まで伸びている。
-中堅・中小企業に注目するのはなぜですか。
実は、米国やカナダ、イギリス、豪州といった英語圏では、中堅・中小企業向けのビジネスがすでに大半を占めている。特に、スタートアップ企業は、会社の規模が大きくなっても対応出来る業務基盤をあらかじめ作っておこうと考える傾向が強い。海外展開や外国人を登用する機会も多いので、異なる言語やルールに柔軟に対応出来るシステムを求めている。
-この数年で、働き方改革という言葉が日本社会に浸透しました。
働き方改革への注目は、我々の事業にとって追い風になっている。生産性向上やクラウドサービスの重要性について、理解を示す企業は以前よりも増えた。
-働き方改革の現状をどう見ていますか。
会議の方法や休暇制度など、時間のやりくりで改善を進める企業が多いと感じる。だが、間接業務の改善など無駄な仕事や作業を減らすことも重要だ。働き方改革に“シルバーバレット(万能な解決策)”はない。細かい施策の積み重ねがモノを言う。
-間接業務のデジタル化が後回しにされる要因は何ですか。
四つの問題がある。まず、経営者の危機意識やリーダーシップの不足。次に、デジタル化するための手段についての知識不足。さらに、自社に適したサービスや組み合わせを見つけ出せない問題。そして、自社に合ったパートナーを見つけ出せないという問題だ。その中でも特に、経営者の危機意識不足は業務のデジタル化を阻む重大な問題だ。
-間接業務のデジタル化が進むと、経理部門に求められる資質や役割はどのように変わりますか。
経理人材は、ビジネスの文脈から法定帳票を読み解く能力が求められるようになる。経費の節約や規定の見直しには、必要な情報を適切な相手に提供することが欠かせない。デジタル化が進むことで、経理もクリエイティブな仕事になるのではないか。
(文・写真=国広伽奈子)
“A2D”から“D2D”へ
-電帳法改正から約2年がたちました。スマホで撮影した領収書の画像を用いる経費精算システムの導入状況について教えてください。
19年1月7日時点では、62社がコンカーの領収書電子化システムを稼働している。さらに、400社以上がシステムの稼働に向けて準備を進めている。18年は規制緩和で導入企業の数が増えたが、19年以降は運用企業の数が増えることでサービスの認知度が高まり、普及につながる見ている。
領収書の電子化は、間接業務に割かなければならない時間や労力の大幅な削減につながる。その他にも、大量の領収書を保管する手間を省く、数字の改ざんや入力間違いを防ぐなど、企業にとってメリットは多い。
-領収書の電子化をさらに推進する上で課題はありますか。
現状で認められているのは、紙の領収書をデジタルで処理する“A2D(アナログからデジタル)”の申請のみで、まだ紙の領収書が必要とされている。領収書の発行から処理までデジタル上で完結する“D2D(デジタルからデジタル)”の段階まで引き上げることが理想的。実現には追加の規制緩和が必要だ。19年の通常国会で審議が見込まれている「デジタルファースト法案」での実現に向けて、働きかけを進めている。
-新たな機能やサービスの追加は考えていますか。
請求書の取り扱いや処理についてもデジタル化を進めていきたい。領収書と請求書という、経理部門にとって大きな負担である2つの法定帳票をどちらも電子化する意義は大きい。
また、現在JR東日本やタクシー会社などと協力しながら、コンカーの経費精算システムと交通系ICカードの連携を強化している。ICカードを使用した瞬間に経費の申請が完了するシステムを、20年以降にリリースできるように開発を進めている。
-キャッシュレス文化の浸透にもつながりそうです。
キャッシュレスの浸透は日常生活における消費の観点から語られることが多いが、業務に関する支出の方がなじみやすいと思う。利用履歴が残ることで、経費の不正利用の抑止にもつながるのではないか。
中堅・中小企業への提案強化
-中小企業向けの提案に力を入れています。
22年には全体の半分を中堅・中小企業向けビジネスで占めたい。そのために経営資源をかなり投入している。専門の営業部隊の設置や廉価版の製品の提供で、16年は全体の4%程度だった中堅・中小企業のビジネスが、18年には22%まで伸びている。
-中堅・中小企業に注目するのはなぜですか。
実は、米国やカナダ、イギリス、豪州といった英語圏では、中堅・中小企業向けのビジネスがすでに大半を占めている。特に、スタートアップ企業は、会社の規模が大きくなっても対応出来る業務基盤をあらかじめ作っておこうと考える傾向が強い。海外展開や外国人を登用する機会も多いので、異なる言語やルールに柔軟に対応出来るシステムを求めている。
働き方改革にデジタル化は欠かせない
-この数年で、働き方改革という言葉が日本社会に浸透しました。
働き方改革への注目は、我々の事業にとって追い風になっている。生産性向上やクラウドサービスの重要性について、理解を示す企業は以前よりも増えた。
-働き方改革の現状をどう見ていますか。
会議の方法や休暇制度など、時間のやりくりで改善を進める企業が多いと感じる。だが、間接業務の改善など無駄な仕事や作業を減らすことも重要だ。働き方改革に“シルバーバレット(万能な解決策)”はない。細かい施策の積み重ねがモノを言う。
-間接業務のデジタル化が後回しにされる要因は何ですか。
四つの問題がある。まず、経営者の危機意識やリーダーシップの不足。次に、デジタル化するための手段についての知識不足。さらに、自社に適したサービスや組み合わせを見つけ出せない問題。そして、自社に合ったパートナーを見つけ出せないという問題だ。その中でも特に、経営者の危機意識不足は業務のデジタル化を阻む重大な問題だ。
-間接業務のデジタル化が進むと、経理部門に求められる資質や役割はどのように変わりますか。
経理人材は、ビジネスの文脈から法定帳票を読み解く能力が求められるようになる。経費の節約や規定の見直しには、必要な情報を適切な相手に提供することが欠かせない。デジタル化が進むことで、経理もクリエイティブな仕事になるのではないか。
(文・写真=国広伽奈子)
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