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形骸化「ノー残業デー」、見直すべき3つのポイント

法施行のタイミングで業務改善
形骸化「ノー残業デー」、見直すべき3つのポイント

終わらないだけの仕事量があるのも現実(写真はイメージ)

 働き方改革関連法が2019年4月から順次施行となり、多くの企業はその対応を迫られている。中でも喫緊の課題は、長時間労働の是正であろう。そこで、その具体的な施策としてなじみのある「ノー残業デー」について考えてみたい。ノー残業デーとは、従業員に所定の終業時刻(定時)での退社を推奨する日のことである。経団連の16年調査によると、7割近くの企業が取り組んでいるようである。

もっとも、企業からも働く人の側からも、うまく活用しきれていないという声を聞く。「仕事が終わらず、他の日に残業するか、持ち帰りになってしまう」といった嘆きも散見される。「定時に終わらなければ残業をしてでも終わらせる」という職場風土はそう簡単に変わるものではないし、終わらないだけの仕事量があるのも現実なのだろう。

 しかし嘆いているだけでは何も変わらない。そこで、法施行のタイミングでもう一度ノー残業デーを見直すことを勧めたい。本来、本気で実施すれば波及効果の高い施策のはずだからである。

 ポイントは3点ある。一つは、週1日だけでも徹底的に時間制約を意識して仕事を進めることである。いわば「業務改善の仕組みづくり」のヒント探しである。退社目標時刻から逆算して仕事のスケジュールを立て、業務の優先順位をつけ、排除できる無駄がないか検証する。この過程で得た気づきを、抜本的な業務改善につなげていく。

 二つ目は「雰囲気づくり」である。定時退社できれば休息が取れる。終業後の予定が立てやすくなることでプライベートの充実も可能となる。ノー残業のメリットを浸透させ、取り組み機運を高めたい。

 最後は「現状確認と調整」である。特定の個人や部署のみがノー残業を達成できていないのであれば、それは業務が偏っている、または与えられた業務に対して従業員の能力が不足している可能性がある。経営者や管理職は業務配分に気を配ってほしい。

 形骸化しがちなノー残業デーだが、長時間労働是正の第一歩として位置づけ直してはいかがだろうか。厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」で他社事例が検索できる。参考にしていただきたい。
(文=高橋美紀 中小企業診断士)

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