パナソニックと新会社、“電動車時代”へトヨタの飽くなき体制作り

電池確保「最後のピース」

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トヨタの豊田章男社長(左)とパナソニックの津賀一宏社長(2017年12月撮影)
 トヨタ自動車とパナソニックが、車載電池の提携関係を深化する。両社は22日、2020年末までに電気自動車(EV)向けなどの車載電池の新会社を設立すると発表。17年末に表明した車載用角形電池事業での協業検討開始から約1年。各社が本格的に展開を始めた電動車の基幹部品である電池分野で、自動車と電機の大手同士が手を組み、国際的な競争を勝ち抜く。

トヨタの戦略-国際標準に狙い


 「これが最後のピースだ」。トヨタの寺師茂樹副社長はEV向けなどの車載電池について、こう断言する。新会社を活用し、電動車で今後大量に使う電池の確保を盤石にする。

 トヨタは新会社設立で、20年を予定する自社ブランドのEV参入に向けた布石を打った。豊田章男社長は17年末に協業を発表した際、「両社でクローズすることなく、幅広く電動車両の普及に貢献していく」と陣営拡大を示唆していた。他の車メーカーも含めた標準技術の確立について、トヨタの好田博昭主査は22日の会見で、「新会社の大きな目的の一つ」と明かす。

 トヨタが17年12月に公表した30年の全世界の電動車販売目標は、550万台以上。これは18年実績の約3・4倍にもなる。現在のトヨタの電動車は大半がハイブリッド車(HV)だが、20年にEVを販売するほか、30年にはEVと燃料電池車(FCV)だけで合計100万台以上を販売する計画だ。

 実現に向けた準備も急ぐ。16年12月発足のEV企画・開発の社内ベンチャー組織「EV事業企画室」を拡充し、18年10月にEVの量産やFCV関連の人員も集約した新組織「トヨタZEVファクトリー」を設置した。

 マツダ、デンソーと立ち上げたEVの基盤技術開発会社「EV C・A・スピリット」にはダイハツ工業やスズキ、SUBARU(スバル)、日野自動車、いすゞ自動車、ヤマハ発動機も合流し、ノウハウを共有する。

 ただ、EVは中国や欧州を中心に動きが活発な一方、国際的な普及度合いは不透明な部分が多く、「30年の段階では主流ではない」との見方も強い。

 また、トヨタはより安全性や急速充電性能が高い、全固体型電池の開発も進めており、車載向けで20年代前半の実用化を目指す。豊田社長はトヨタは「電動化のフルラインアップメーカー」と強調する。今回の新会社設立は、どの技術が台頭しても手を打てるよう、全方位で技術基盤を押さえるのも狙いだ。

 世界大手では独フォルクスワーゲン(VW)が25年にはEVを20車種そろえ、生産台数100万台以上を見込む。米ゼネラル・モーターズ(GM)も23年までに20車種のEVを販売する。19年には中国が新エネルギー車(NEV)規制を導入するほか、仏・英両政府が40年以降のガソリン・ディーゼル車の販売禁止を表明するなど、各国・地域で規制が強まり、EV対応に迫られている。

                  

 一方、トヨタとパナソニックはHV向け電池を手がけるプライムアースEVエナジー(PEVE、静岡県湖西市)を共同運営しており、好田主査は新会社設立後も「HV用ニッケル電池を中心にしっかり生産を担ってもらう」とする。

 しかしPEVEもHV向けのリチウムイオン電池の増産投資を積極化し、EV向けも強化する方針を掲げる。好田主査は「両社で組んでしっかり対応する」と強調するが、「将来は競合関係になる可能性もある」(関係者)。経営効率を考えれば、トヨタ主導での事業集約や統合も視野に入りそうだ。

海外メーカーの台頭-カギは大容量電池の供給力


 車載電池業界の風雲児が中国の寧徳時代新能源科技(CATL)だ。TDKの電池子会社から独立し、創業からわずか7年で上場したベンチャーながら、EV関連産業を育成する中国政府の強力な支援を受けて急成長。17年には出荷量でパナソニックを抜き、世界首位に躍り出た。

 主要取引先は中国完成車メーカーや独BMWなど欧州完成車メーカーだが、中国のNEV規制に合わせ、EV生産を本格化する日産自動車やホンダといった日系完成車メーカーとも急接近。18年5月には横浜市に日本法人を設立した。

 世界的な車載電池の需要拡大に対応するため、20年には年産能力を現状比2倍の50ギガワット(ギガは10億)時に増強する。

車載電池メーカーは世界で続々と台頭(中国CATL生産ライン)

 電池業界はCATLやパナソニックのほか、中国比亜迪(BYD)、韓国LG化学、韓国サムスンSDIなど日中韓の大手メーカーがシェアを争う。中国では政府が認めた電池を搭載した車に補助金を与える制度が近く終了する見通しで、日韓勢が相次いで現地で生産能力を増強する動きを見せ、CATLやBYDを猛追する。

 CATL日本法人の多田直純社長は、「電動車の急速な市場の伸びに対し、大容量の電池を供給できる投資力がないと(生き残りは)難しい」と主張する。

 電池をめぐる競争から頭一つ抜けるには、品質・コスト競争力に加え、電池を安定供給する生産体制を築ける“体力”の有無がカギだ。

パナソニック-事業成長より投資回収


 パナソニックは現在、米EV大手のテスラが採用する円筒形電池と、トヨタを含むその他の企業向けの角形電池を手がける。トヨタとの新会社に、角形電池工場を含む設備資産を移管する。車載電池は事実上、基礎研究とテスラ事業だけがパナソニックに残る。

 パナソニック車載カンパニーの人見健事業開発部長は、「トヨタとは対等な関係。その証拠に我々が営業窓口になり、トヨタ以外に販売していく」と、むしろトヨタとの連携が成長のカギとする。

 ただ、車載電池はEVの中核部品だ。トヨタという特定企業と組むことを懸念する声が出る恐れもある。これについて、パナソニックは「トヨタとの提携を理解してくれる企業も、ある程度いるはずだ」(人見氏)と述べるにとどまる。今後、トヨタと競合する国内外の自動車メーカーからの受注に水を差すことも、パナソニックは覚悟している。

 パナソニックの車載電池事業の売上高は、21年度までの3年間で倍増の8000億円まで伸びる成長事業だ。ソニーの業績躍進を支えるスマートフォン向け画像センサーのようになる期待もある。

 ただ、車載電池事業は需要が伸びるほど先行投資が重くなり、赤字幅が拡大した。財務的リスクへの懸念も、トヨタとの新会社に角形事業を移管する決断を後押ししたようだ。

 パナソニックに残るテスラ向け電池では、18年度は販売規模が前年度で2倍超に飛躍する見込みだ。だが、津賀一宏社長は「テスラのEV販売は今後、成長が緩やかになる」と見通す。パナソニックは事業成長を急ぐより、投資回収を本格化したい意向もある。

新会社に移管するパナソニックの中国・大連の車載用角形電池工場

(文=名古屋・今村博之、同・政年佐貴恵、下氏香菜子、大阪・平岡乾)

日刊工業新聞2019年1月23日

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