市場把握の拠り所だったのに…、ビール類出荷量レポート中止の影響

酒造組合が2019年以降の取りやめを発表

 ビール酒造組合などが1992年からまとめてきた課税出荷数量に基づくビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)の市場動向レポートを2019年以降から取りやめると16日に発表した。国内ビール類市場の動向を客観的に表す指標となってきたが、クラフトビールやプライベートブランド(PB)の増大といった市場の多様化により、市場の正確な動向を伝えられなくなったのが理由としている。客観性のある市場データが提供できなくなることで業界の実態が分かりにくくなる懸念がある。

 発表の取りやめの背景には、18年上期の発表時に議論となったPBの扱いの問題があるとみられる。キリンビールがイオンから受託製造したPBをキリンのシェアに組み入れたことで、「発注元のブランドを含めるのは市場実態に合わない」と他社が反発した。上期と今回の18年分の発表については、第三のビールにPBの構成比を明記することで事態が収束したようだった。

 ただ18年のビール類市場が14年連続の前年割れする中、このうちの第三のビールは前年比3・7%増と5年ぶりにプラスに転じた。これについて「PB構成比で4・7%が含まれており、この分を除くと実質のマイナス成長になる」という指摘がある。PBを含めるかどうかで、市場がプラスかマイナスか変わってしまう事態を踏まえ、正確な動向の伝達が難しいという判断につながったと思われる。

 各社ばらばらの販売数量の発表に客観性を持たせるために26年にわたり続けてきた課税出荷数量の発表。これが終わることで、今後は92年以前のように、各社ばらばらの発表に戻ることになる。市場を把握する拠り所となっていた指標を失うことは、消費者にとって業界が見えにくくなる懸念がある。業界各社が知恵を絞り、より市場実態に合った指標づくりが求められるだろう。

2018年の出荷量、14年連続減


 ビール各社が16日に発表した2018年のビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)課税出荷数量は前年比2・5%減の3億9390万ケース(1ケースは大瓶20本換算)となり14年連続のマイナスになった。業務用ビールの値上げや割安感がある缶チューハイなどへのシフト、自然災害が多かったことなどの影響により、漸減傾向を止められなかった。

 ジャンル別では、第三のビールが好調で同3・7%増の1億4983万ケースと5年ぶりにプラスに転じた。キリンビールの「本麒麟」のヒットやプライベートブランド(PB)が増えたことにより前年を上回った。ビールが同5・2%減の1億9391万ケース、発泡酒が同8・8%減の5015万ケースでそれぞれ3年連続の減少。

 アサヒビールがビールで同5・5%減、第三のビールで同8・9%減。サントリービールがビールで同4・1%減、第三のビールで同2・1%減。サッポロビールでビールが同3・6%減、第三のビールが同8・1%減など軒並みのマイナス。キリンもビールで同6・0%減だが、第三のビールが同28・8%増と大きく伸ばし、唯一ビール類で同5・3%増と前年を上回った。

 キリンが躍進したことで国内シェア首位のアサヒに肉薄した。アサヒの37・4%に対し、キリンが34・4%と3・0ポイント差となり、前年の7・3ポイント差から詰め寄った。

日刊工業新聞2019年1月17日

  

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