「一番搾り」を生んだ、キリンの無いものは自分たちで作る文化

R&D“魂”

受け継がれる魂


 最初に濾過した麦汁だけを使う「一番搾り製法」のビール。免疫細胞の司令塔に直接働きかける唯一の乳酸菌。4種類のクラフトビールを1台で注出できる「タップ・マルシェ」サーバーなど。これら求められるニーズに対して、具体化して生み出す研究開発(R&D)力こそが、キリングループの大きな強みでもある。

 「(世の中に)ないものは自分でつくる文化がある」―。キリンホールディングス(HD)常務執行役員R&D戦略・品質保証統括の小林憲明はグループのR&Dに受け継がれる「魂」をこう表現する。

 もともと工場などで必要にもかかわらず、ない設備は自前でつくってきた。かつて製造ラインでの品質の管理は、多くの検査員が目視で監視していた。この作業を置き換えるため、カメラで監視する検査機を開発。検査システムはこれまでに同業他社にも販売している。こうした文化が新たな価値を生み出す源流になっているという。

充実した設備


 R&Dの体制で以前は、各事業会社などにそれぞれ研究所を設置していた。だが、2013年に国内の各事業を統括するキリンを発足し、R&D本部を新設。開発プロセスを効率化させる狙いで傘下に6研究所を集めていった。

 「研究所の規模や設備は充実しており、グループの強みだ」(小林)と胸を張る。例えば、酒類技術研究所が持つ試験プラントは年1600回もの試験醸造が可能な設備。また1100種類もの酵母を保有し、「これは世界でもトップクラス」(同)という。さらに飲料メーカーでは珍しく自社で包装容器を開発するパッケージング技術研究所がある。3Dプリンターやサンプルを造るラインまで設置する。

 この生み出す文化と充実した体制があったからこそ、17年の主力ビール「一番搾り」の大幅リニューアルや18年発売の第三のビール「本麒麟」開発の成功につながったという。

 今後に具体化する研究テーマについて、「いくつもシーズがあり、研究開発を進めている」と、小林は大きな花を咲かせるべく種を育てる準備に忙しい。(敬称略)

日刊工業新聞2018年12月20日

  

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