NHKのテレビとネット「常時同時配信」は民業圧迫?
テレビと同じ番組をインターネットで同時に流すNHKの「常時同時配信」が、目標とする2019年度開始に向けて大詰めを迎えた。常時同時配信を可能とする放送法改正案が1月の通常国会に提出される見通しだが、NHKはその条件として、受信料引き下げなどを求められた。動画配信サービスの台頭やスマートフォンの普及などでテレビの視聴環境が大きく変化する中、赤字覚悟での改革が求められている。
「平成が終わり、新しい時代がスタートする。この1年はNHKにとって大きな転機となる」。NHKの上田良一会長は10日の定例会見で、こう意気込んだ。NHKは20年の東京五輪・パラリンピックを見据え、19年度中の常時同時配信スタートを目指している。
これまでテレビは自宅で視聴するのが主流だったが、スマホの普及などを背景に視聴環境が大きく変化した。常時同時配信が実現すれば、視聴者は外出先でもスマホやタブレット端末で番組を視聴できるようになる。NHKとしては若者を中心とした新たな視聴者層を取り込んで財源確保したい狙いもある。
NHKはこれまでも災害時など緊急放送やスポーツ番組などの一部をネット配信してきた。だが、24時間放送するには法改正が必要となる。総務省の有識者会議は、受信料の引き下げなどを条件に常時同時配信を容認した。これに対応する形で、NHKは受信料を20年度までに4・5%引き下げる計画だ。「値下げ幅が小さい」という声も上がるが、世帯数の減少やテレビ保有率も低下し経営環境は厳しさを増す。さらには18年12月に始めた「4K」「8K」向けの投資もかさむため、「しばらく赤字になることを覚悟した上での値下げだ」(上田会長)と強調した。
一方、民放各社からは「民業圧迫だ」と指摘する声も根強い。国民からの受信料収入で支えられているNHKが、それを使って常時同時配信に乗り出すことへの不公平感が要因だ。
現在、NHKがネット事業に投じる費用は受信料収入の2・5%を上限としており、日本民間放送連盟(民放連)はこの条件の現状維持を求めている。これに対し上田会長は「適切な条件の中で抑制的な管理に努める」と述べるにとどめており、具体的水準が不明瞭だ。
次なる成長に向けてかじを切ったNHKだが、解決すべき課題は多い。国と放送各社と向き合いながらむずかしい判断を迫られている。
(文=大城蕗子)
「平成が終わり、新しい時代がスタートする。この1年はNHKにとって大きな転機となる」。NHKの上田良一会長は10日の定例会見で、こう意気込んだ。NHKは20年の東京五輪・パラリンピックを見据え、19年度中の常時同時配信スタートを目指している。
これまでテレビは自宅で視聴するのが主流だったが、スマホの普及などを背景に視聴環境が大きく変化した。常時同時配信が実現すれば、視聴者は外出先でもスマホやタブレット端末で番組を視聴できるようになる。NHKとしては若者を中心とした新たな視聴者層を取り込んで財源確保したい狙いもある。
NHKはこれまでも災害時など緊急放送やスポーツ番組などの一部をネット配信してきた。だが、24時間放送するには法改正が必要となる。総務省の有識者会議は、受信料の引き下げなどを条件に常時同時配信を容認した。これに対応する形で、NHKは受信料を20年度までに4・5%引き下げる計画だ。「値下げ幅が小さい」という声も上がるが、世帯数の減少やテレビ保有率も低下し経営環境は厳しさを増す。さらには18年12月に始めた「4K」「8K」向けの投資もかさむため、「しばらく赤字になることを覚悟した上での値下げだ」(上田会長)と強調した。
一方、民放各社からは「民業圧迫だ」と指摘する声も根強い。国民からの受信料収入で支えられているNHKが、それを使って常時同時配信に乗り出すことへの不公平感が要因だ。
現在、NHKがネット事業に投じる費用は受信料収入の2・5%を上限としており、日本民間放送連盟(民放連)はこの条件の現状維持を求めている。これに対し上田会長は「適切な条件の中で抑制的な管理に努める」と述べるにとどめており、具体的水準が不明瞭だ。
次なる成長に向けてかじを切ったNHKだが、解決すべき課題は多い。国と放送各社と向き合いながらむずかしい判断を迫られている。
(文=大城蕗子)
日刊工業新聞2019年1月15日