日本の石油元売り、アジア進出の成否

精製品を輸出、保有設備の有効活用狙う

 原油相場が約1年半ぶりの安値水準となっている。昨秋の米国によるイラン制裁第2弾で、日本など8カ国・地域の原油取引について180日間の適用除外が認められて需給逼迫(ひっぱく)懸念が後退。米中貿易摩擦に伴う世界経済の先行き不透明感から需要減退観測が浮上した。ただ、アジアを中心とする新興国需要の伸びを考えると一時的な調整局面という見方も強く、日本の石油大手は海外市場を見据える。

 日本エネルギー経済研究所が2018年12月中旬にまとめた「2019年の内外石油情勢の展望と課題」によると、不確実要素として制裁適用除外期間明けのイラン産原油輸出量や米中貿易摩擦を挙げているものの、代表的指標である英国産北海ブレント原油価格を19年上期平均で1バレル当たり65ドル、下期平均で同70ドルが中心水準になると予測。19年前半は米シェールオイルの増産が寄与するが、イランの輸出量減少を見込む後半には需要超過になるとした。

 JXTGグループの資源開発会社、JX石油開発の細井裕嗣社長も「新興国需要の伸びを考えれば、供給側の余力は少なくなっている」と見る。

「製油所の再編は機能集約だけではない」


 石油元売り各社が主力とする国内燃料油の需要は自動車市場の成熟に加え、省燃費のハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)が普及し00年以降、減り続けている。

 ここ数年の販売量は年率2―3%減。人口減少社会を迎え、さらに右肩下がりの傾向が目立っている状況だ。日本市場とは対照的に、目覚ましい成長を見せるのがアジア新興国。その需要を取り込もうとするのは必然だ。

 JXTGエネルギーは18年4月、ベトナム政府系石油会社であるペトロリメックス(ハノイ市)と麻里布製油所(山口県和木町、原油処理能力日量12万バレル)の共同運営化に関する覚書を締結した。

 19年4月をめどに共同出資で製油所運営会社を設立し、石油精製品のベトナム輸出を始める。両社は16年に、ベトナム政府を含めた三者間で戦略的協業契約を締結し、当時のJXエネルギーがペトロリメックスによる第三者割当増資も引き受けている。ベトナムでは経済成長に伴い石油需要が増え続けており、保有する精製設備を有効活用する狙いだ。

 すでにJXTGエネルギーは10年に、大阪製油所(大阪府高石市)を中国系エネルギー会社の出資で共同運営し、アジア・太平洋市場に石油製品を輸出している。「製油所の再編は機能集約だけではない。こうした形で海外の需要増に応える展開も選択肢になる」(大田勝幸社長)とする。

洋上風力発電に布石も


 出光興産は18年11月、ベトナムに建設していたニソン製油所(タインホア省ニソン経済区)を本格稼働した。同製油所はクウェート国際石油、ペトロベトナム、三井化学との4社合弁事業で13年に着工。17年4月にプラント据え付けが終わり、1年半余り試験運転していた。1日当たり20万バレルの原油を処理するフル生産に入り、ペトロベトナムを通じてガソリンなどを同国内へ供給する。

 日本の石油会社が海外で大規模製油所を建設・運営するのは初めて。ベトナム国内の製油所はペトロベトナムの既存施設に次いで2カ所目になり、両製油所で国内需要の約8割を担い、2輪車に続いて4輪車が普及するモータリゼーションに対応する能力増強も検討する。「プロジェクトに携わった人材は財産。チャンスがあれば新たな海外展開も狙いたい」(松下敬副社長)と野心を見せる。

 一方で、将来の脱炭素社会を見据えた再生可能エネルギー事業への布石も打つ。出光はノルウェー沖の北海油田で、浮体式洋上風力による自家発電を導入する。

 子会社が権益を持つ油田に浮体式洋上風力発電設備11基のウインドファームを併設し、原油生産用電力を賄う計画だ。洋上風力発電は日本国内でも、再生エネ主力電源化を実現する最右翼と期待されており、知見を蓄積する狙いがある。

 エネルギー産業では、すでに大手電力が海外の洋上風力発電事業に参画しており、都市ガス大手も追随する構え。洋上風力発電をめぐり、市場の自由化で垣根がなくなった電力・都市ガス業界と三つどもえの争いが繰り広げられそうだ。
(文=青柳一弘)

日刊工業新聞2019年1月1日

  

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