「新世代元年」、マツダ社長が語った絶対に妥協しないこと

丸本明氏インタビュー

 マツダにとって2019年は経営上重要な意味を持つ年になりそうだ。まずは「スカイアクティブ・テクノロジー」の次の世代に当たる技術を搭載した車(=新世代商品)を、年初から米国を皮切りに市場投入する。新世代商品第2弾のスポーツ多目的車(SUV)も、年内に立て続けに発売する予定だ。

 4月からの新年度には新しい中期経営計画も始まる。19年3月期の世界販売台数見通しが161万7000台のところ、22年3月期に180万台、24年3月期に200万台まで伸ばす「今後の取り組み方向性」を公表済みで、新中計はこれに沿ったものになる。21年にはトヨタ自動車と共同出資の米国新工場が稼働する。

 車業界が「100年に1度の大変革」にあるとされる中、20年には創立100周年を迎える。丸本明社長は次の100年へマツダをどう導くのか。18年5月の社長就任会見で掲げた「挑戦」をテーマに聞いた。

“開発のストーリー”訴求


 ―19年を「新世代商品元年」と位置付けました。どういう思いがあるのですか。
 「新世代商品のトップバッター、次期『マツダ3』は、デザインと次期スカイアクティブ技術で、狙い通りの商品に仕上がった。いい機会なのでこれを機に、マーケティングと販売、サービスの質を高めていきたい」

 ―ビジネス改革の意図もあると。
 「当社では販売よりはモノづくりの側がビジネスをけん引してきた。車の両輪になるよう、売る方はもっと力を付けてほしい。販売やサービスによる顧客体験の質を高めて、次にまたマツダ車を買っていただけるように変えていきたい。リテンション(顧客維持)が、うちはまだ弱い」

 ―「スカイアクティブX」という新しい燃焼方式のエンジンをどう訴求しますか。
 「開発者のストーリーを是非伝えたい。『T型フォード』で車の大量生産が始まったのが111年前の1908年。この間いくつかの会社が商品化を断念してきたのがスカイアクティブXで実用化したHCCI(予混合圧縮着火)という燃焼。ロータリーエンジンのようにストーリーをお伝えしたい」

 ―トランプ大統領の米国にどう対応しますか。
 「5年後、10年後も米国が世界2位の自動車市場であることは変わらないだろう。無理に台数を伸ばすよりはビジネスの質を高めていく。足元にいろいろな動きが出てきても右往左往することなく、やるべきことをやっていく。中国市場でも同じことだ」

 ―米国の販売網改革に力を入れる理由は。
 「目指す販売のビジネス品質に対して、日本や豪州などに比べると米国では乖離(かいり)が大きいためだ。マツダが苦しい時代の“負の遺産”が残ってきた。闇雲に販売網を広げて在庫を抱えさせ、インセンティブで売り切ることをやってきた。当時やむを得なかったが、結果車の残価が下がってブランドが毀損された。これは絶対に2度と繰り返したくない。『新世代店舗』と呼ぶ販売店を21年に300店舗くらい整備し年平均1000台くらい売ってくれれば。300店舗で30万台、残り250のディーラーでプラスアルファを売れる体制を作る」

小規模でも光る存在に
 ―20年が創業100年なので、19年は次の101年に向けて歩み出す年とも言えます。
 「次の100年なんてとても分からない。とりあえずは30年の姿を描いてそこからバックキャスティングしながら、次と次の次の中計を作っていくというのが布石。ただし30年の姿の中には、いわゆるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)のうち、シェアリングを除いてすべて入れている。規模は小さいが独自性と強みを持ったキラリと光る存在でありたい。CASEにも賢く対応していく」

 ―24年3月期の年間世界販売台数200万台を掲げています。
 「200万台は販売目標ではない。それくらい買ってもらえる力を付けよう、生産面でも同等の能力を持とうという意味。販売目標と言ったとたん一番の指標になって、無理に値引きしても売る、みたいなことはしない」

―200万台規模でキラリと光る会社というと、ドイツのプレミアムメーカーを思い出します。

「値段はどんどんつり上げるつもりはなく、市場とお客さまが決めるもの。新しい技術で提供できる価値に応じた価格はいただきたいが、そこも徐々にという感じになる。どんな時代になっても、走る喜びとデザインにこそマツダの価値はある。そこは絶対に妥協せず『もう一度マツダに乗りたい』と思ってもらえるブランドになりたい」

日刊工業新聞2019年1月7日

  

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