リニア開業まであと9年!工事は順調に進んでる?

新たな国土軸のあり方検討、ターミナルの構想も本格化

新たに製造する改良型試験車の先頭車両
 JR東海が2027年中を目指すとしているリニア中央新幹線の品川―名古屋間開業まで9年を切った。同社が建設主体となり、5兆5000億円もの事業費を投入する類を見ない規模の民間事業。工事は着々と進んでいるものの、すべてが順調であるとは言えない状況だ。一方で国はリニアの開業を見据えて、新たな国土軸のあり方の検討や、ターミナルの構想も本格化している。

車両開発、日立が参画


 JR東海は18年12月、リニア営業車両の仕様策定に向けた改良型試験車の製作を発表し、車両開発パートナーに日立製作所が加わったことを明らかにした。試験走行中のL0系は、最初の編成を三菱重工業と日本車両製造で製作したが、2編成目では三菱重工が抜けた。

 金子慎社長は日立の参加を「切磋琢磨(せっさたくま)する形でレベルアップ、コストダウンが進む」と期待する。営業車両の量産に向けて、東海道新幹線次世代車両「N700S」と同じ車両メーカー2社による開発体制が整った。

 リニアの土木工事は18年末時点での工事契約済み区間の延長が工事区間のほぼ5割に達している。山岳部や大深度地下の長大トンネル、新幹線ホーム直下に構築する品川・名古屋両駅といった難易度の高い工事の発注を終え、用地取得や残土の受け入れ先確保も推進する。専従社員は1260人を数え、今春にはさらなる増員も見据えている。

 リニアで“軌道”の役割を果たすガイドウェイの製作も始めている。すでに数年前から国内重電大手が基幹部品であるコイルの製作に取り組んでいる。全線で数十万個が必要と見られるガイドウェイユニットは、製作から敷設まで各地の仮置き場で保管する予定だ。

終着駅・新大阪、地下にターミナル


地下約90mまで掘削した立坑「北品川非常口」底部分

 リニアは新たな国土軸形成に大きな役割を果たすことから“国家的プロジェクト”とも指摘される。JR東海は当初、品川―名古屋間の開業後に財務状況の回復を待って8年後に名古屋―大阪間を着工する方針だった。しかし16年に鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)を通じた低金利の財政投融資を活用することで、延伸区間の着工前倒しを決めている。

 リニア開業で品川―名古屋間は最速40分、品川―大阪間は同67分で結ばれる。超高速かつ多頻度大量輸送の移動手段は、三大都市間に都市内の移動と変わらない利便性をもたらし「スーパー・メガリージョン(巨大都市圏)」を生み出す。

 「リニア開業は(高度経済成長期に開通した)東海道新幹線ほどのインパクトにはならない」(国土交通省)との声もあるが、ビジネスやライフスタイル全般に影響を与えるのは必至。ヒト・モノ・情報が集中する巨大都市圏の誕生は、どのような効果を及ぼすか。国交省は17年秋、有識者による“スーパー・メガリージョン構想検討会”を設置し、今夏の取りまとめを目指して検討を重ねている。

 一方、リニア終着駅候補の新大阪駅では、最短37年の開業に向けて地下ターミナルの検討が本格化する。国交省は18年「バラバラにやっていては機能を最大限に発揮できない」とし、生産性革命プロジェクトの一つに位置づけた。同駅にはリニアと北陸新幹線が新たに乗り入れるほか、西日本方面への新幹線増発を想定して山陽新幹線ホームの増設も視野に入れる。

 各新幹線と伊丹空港や関西空港へのアクセス鉄道との連携可能性も探る。19年度当初予算案に調査費を計上。西日本の交通ハブを構築する巨大プロジェクトは民間資金の活用を念頭に、その実現性も模索する。

完成時期・事業費、工事進むも見通せず


側壁に浮上・案内コイル、推進コイルが埋め込まれたガイドウェイ

 リニアはJR東海による民間事業であることから、工事の契約や進捗(しんちょく)、今後の見通しなどについての情報公開は限定的で、全貌がつかみにくい。金子社長は工期について「思ったより先送りになっており、後工程が窮屈になっている」と話す程度。品川―名古屋間を確実に27年内に開業できるという目算も立っていないのが現状だ。

 南アルプス直下をトンネルで通過する静岡県区間では、大井川の水量問題の解決が見通せない。JR東海は地元要求を受け入れると表明したものの、合意形成に至っておらず、工事用道路などの準備工事に着手したが、本体の着工は未定だ。

 従来の新幹線は営業線を使って長期の走行試験を実施した上で開業を迎えている。新方式のリニアは、これまでに山梨実験線で267万キロメートル、地球66周に相当する試験走行を実施しているが、開業前の試験も不可欠だ。柘植康英会長は17年に社長当時の定例会見で、開業前に「1年プラスα」の試験が必要だとの認識を示しており、事実上、26年中の工事完了が必要となる。

 品川―名古屋間は5兆5235億円の予算だが、14年の工事認可申請時点で、昨今の物価や労務単価の上昇、地元補償費の増加分をすべて織り込んで算出した訳ではない。工事量がピークに向かう中で、工期や費用のコントロールは厳しさを増す。金子社長も「(工事費が)膨らむ余地はあるが、コストダウンの努力をしながら全体として膨らまないようにやっていく」と話すのが精いっぱいだ。
(文=小林広幸)

日刊工業新聞2019年1月1日

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