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リニア談合問題後の大林組、新社長が語るテコ入れ策

風通しのよい社内風土を醸成
 昨年来のリニア談合問題を受け、大林組がコンプライアンス(法令順守)体制の強化を急いでいる。3月に就任した蓮輪賢治社長にとって喫緊の課題だ。自ら策定した中期経営計画(18年3月期―22年3月期)で目標に掲げる収益基盤の多様化や海外事業のテコ入れもこれからが正念場。蓮輪社長に今後の戦略を聞いた。

 ―リニア中央新幹線工事の入札談合問題を受け、コンプライアンス体制の整備に取り組みました。経営課題をどう見ていますか。
 「第一にコンプライアンスの徹底を掲げ、『独占禁止法遵守』の活動を強固にしていく。上司、部下を問わずオープンで風通しのよい社内風土を醸成する。(同業者との接触ルールの厳格化などにより)同業者との会合は一歩立ち止まり、不要なのか必要なのか、自由闊達(かったつ)に議論できるようにしたい」

 「6月に再発防止のための追加施策が施行され、私も同業者との会合の際は場所や相手などを自己申告しているが、手間ではない。不必要な会合かどうか、仲間や上司と参加の是非を検討する雰囲気作りが必要」

 ―今後、第三者委員会の設置、発生原因の究明は。
 「公判の行方をみて遅滞なく、設置していきたい」

 ―中期経営計画の初年度は順調な滑り出しでした。2年目はどう取り組みますか。
 「建築、土木の2本柱に加え、開発、新領域の四つの収益事業を着実に伸ばしていく。建築、土木は受注環境が良い。人的資源には限りがあるため、生産性向上にトライしながら、顧客ニーズの品質、工程、安全を満たせるよう受注の消化に力を注ぐ」

 ―開発事業と新領域事業の方針は。
 「開発は都市部の再開発が動きだす中、オフィスビルの所有や用地取得に挑戦し、事業領域を拡大する」

 「新領域は、再生可能エネルギーによる発電事業を手がける。木質バイオマス発電をはじめ、洋上を含む風力発電を推進していく。将来は小水力発電、地熱発電の事業性を判断する」

 ―海外事業は。
 「途上国の建設事業は、ローカルな力が必要。タイ拠点のタイ大林も40年かかっている。拠点の現地法人化を視野に入れ、法制度や商習慣の経験を積み、事業モデルを構築していく」
蓮輪賢治
日刊工業新聞2018年7月20日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
4事業のうち、再生可能エネルギーを扱う新領域は事業化のハードルが多岐にわたる。テクノ事業創成本部が中心となり、社内の技術部門のリソースを活用するなどスピード感を追求する。蓮輪社長は内外でバランス良い成長を重視しており、海外子会社にも目配りしグループ力の発揮を目指す。(編集委員・神谷信隆)

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