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世界に羽ばたく“破れない”障子紙

栗田煙草苗育布製造の「紗靱紙(しゃじんし)」
世界に羽ばたく“破れない”障子紙

紗靱紙(左は絵を転写したもの)

**和の文化 多用途で活躍
 障子紙に新たな風を吹き込む―。栗田煙草苗育布製造(栃木県佐野市、栗田昌幸社長、0283・22・3101)が、2015年に開発した薄葉寒冷紗(かんれいしゃ)と障子紙の組み合わせで、新たな収益源の確保に努めている。

 同社はタバコの苗を育成する際に霜や虫を防ぐのに使うネット「寒冷紗」の製造で、1907年(明40)に創業した。その後、「煙草(たばこ)」を社名に残しつつ、産業資材用途にも幅を広げ、現在では防水や各種補強材として建築資材向けも販売している。15年には寒冷紗の強度を保ちつつ薄くする「特殊カレンダー技術」で、従来品と比べて50%以上薄い、厚さ0・12ミリメートルの薄葉寒冷紗を開発。この薄葉寒冷紗をベースに同年開発したのが障子紙の“強靱(きょうじん)化”を実現する「紗靱紙(しゃじんし)」だ。翌年から県内の飲食店で試験運用を始めた。栗田社長は「破れないことからメンテナンス不要で好評」とし、「和室ブームの復活につながるかも」と期待を寄せる。

 紗靱紙は、薄葉寒冷紗を、高温・高圧で他の材料と一体化させる独自の技術で、障子紙と組み合わせた。一方、重ね合わせることから厚みが増すことが懸念されるが、従来の障子紙より0・05ミリメートル程度増すだけで「障子紙の風合いや通気性、遮光性を保ちつつ、6倍以上の破れにくさを併せ持つ」(栗田社長)。また、紗織物の特性からシワやたわみの発生を抑えて寸法安定性に優れるほか、木製に限らずアルミニウム製の建具などにも一般的なのり剤で貼ることができる。

 製品ラインアップは、紗織物の目の細かさで2種類を用意。目が粗いタイプはそれだけでも模様のように感じられるという。どちらも絵や写真などをカラーで転写することができるため、いわゆる障子としての用途に限らず、インテリアなど多用途での活用が期待できる。今月中旬に台北市で開催の「國際建築建材及び産品展」に紗靱紙を出品。栗田社長は「障子紙の文化がない台湾で、日本の文化を発信していきたい」と意気込む。
(文=栃木・前田健斗)
日刊工業新聞2018年12月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
年末の大掃除で障子の張り替えにかなりの時間や手間がかかっていた記憶があります。破れなくて華やかな障子紙は魅力的。紙製品も次々と進化を遂げています。

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