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インフルエンザ流行期に突入、話題の治療薬「ゾフルーザ」の特徴は?

製薬会社の開発加速、治療法の選択肢拡大
インフルエンザ流行期に突入、話題の治療薬「ゾフルーザ」の特徴は?

塩野義製薬のゾフルーザ

 インフルエンザの流行期が到来し、塩野義製薬が開発したインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」が大きな話題となっている。同薬は世界で唯一、経口服用1回で治療を完了する。今シーズンのインフルエンザ領域は、塩野義以外にも沢井製薬がタミフルのジェネリック医薬品(後発薬)を発売した。田辺三菱製薬も植物性インフルエンザワクチンの開発で大詰めを迎えるなど、展開が相次ぐ。

増殖する仕組み


 インフルエンザ感染症は、ウイルスがヒトのメッセンジャーリボ核酸(mRNA)中のたんぱく質合成システムを取り込んで複製を繰り返し、生体内でインフルエンザウイルスが増殖する仕組みだ。同ウイルスが持つ酵素「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ」が、ヒトのmRNAにあって複製する役割を持つ「キャップ」をもぎ取り、ウイルス側のmRNAにくっつけて自己複製に必要なたんぱく質を合成する。

 塩野義が開発したゾフルーザは、このキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害し、ウイルスのたんぱく質合成と増殖を食い止める作用を持つ。ウイルスの増殖サイクルの根幹を止め、血中濃度半減期が長いことも服用回数の少なさの決め手となった。さらに「服薬による異常行動はほとんど見られない」(手代木功社長)とするなど製品の特性に自信を持つ。

 一方でタミフルなどの従来品は、ゾフルーザと異なる作用機序を持つノイラミニダーゼ阻害剤に分類されている。インフルエンザ治療薬として世界を席巻していたタミフルは特許切れが始まっており、すでに後発薬が登場している。開発元のスイス・ロシュはタミフルを補う形で、ゾフルーザの日本と台湾以外の開発と販売権を取得した。ロシュはピーク時の売上高で年10億ドル(約1100億円)になると10月に発表している。

ユニークな方針


 タミフルの後発薬を国内で唯一展開しているのが、沢井製薬だ。9月、「オセルタミビル」を発売した。沢井光郎社長は、「積極的に販売しない戦略をとる」とのユニークな方針を示している。世界的な課題となっているタミフル耐性に考慮した販売を心がけていくという。

選択できる時代


 インフルエンザワクチンについても、開発競争が進んでいる。田辺三菱製薬がカナダ子会社で開発中の、たばこの葉を活用した植物性ワクチンの臨床試験が佳境に入った。従来の方法である卵を使ったワクチンは成育が一定しないこともあり、「不作」となる可能性もある。だが同社のワクチンは安定した生産が期待できるほか、卵アレルギー患者にも適用が可能になる。このほかにも阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)は、ワクチン接種者の負担を軽くする経鼻インフルエンザワクチンの開発を急ぐ。

 インフルエンザ領域は従来、治療法もワクチン接種法も限られた狭い領域だった。多様な治療法やワクチン接種が出てきたことで、医師や患者らが自由に選択できる時代を迎えようとしている。
(文=大阪・石宮由紀子)
日刊工業新聞2018年12月27日

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