「米欧から押し付けられただけでは」ILC誘致に研究者が多くの疑念

政府の可否判断はどうなる

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ILCの完成イメージ(高エネ機構提供、(C)Rey.Hori)
 国際プロジェクトである超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の東北地方への誘致は政府の最終決定を待つ段階となった。19日に日本学術会議が文部科学省に提出したILC計画に関する回答には「ヒッグス粒子の研究が重要である」と評価したものの「国内への誘致を支持するには至らない」との結論が示された。学術会議の回答を基に政府は誘致の可否を判断する見込みだ。

 ILCは、物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」を発生させ観測し、宇宙誕生の謎に迫ることが期待される大型施設。日米欧が参加する国際共同プロジェクトだ。一方、総建設費は約8000億円と試算されている。ホスト国の日本は半額の4000億円を負担することになるため、誘致に対して慎重な議論がなされていた。

 なぜ日本が参加の可否の表明を急ぐのかと言えば、2019年始めに20年からの5カ年計画である欧州次期素粒子物理戦略の策定作業が始まるためだ。同戦略は素粒子物理学の世界で大きな影響力を持ち、ここに計画が盛り込まれなければ実現はほぼ不可能になる。

 学術会議の回答に対し、ILC推進派から意見が噴出。東北ILC準備室の室長で岩手県立大学の鈴木厚人学長は「学術的意義が認められたことは大きい。だが経費分担に関する疑念からILCの支持に至らないとの結論になったことは残念。適切なプロセスを踏み、政府間協議を進め経費分担を話し合うべきだ」と反論した。

 だが新たなプロジェクトの経費負担は「他の研究予算を圧迫するのではないか」という疑念を多くの研究者に抱かせている。「もし本当に大切なプロジェクトであれば米国が誘致に手を上げていたはず。日本は米欧から負担を押し付けられただけではないのか」(国の研究機関のトップ)との厳しい見方もあり、大型プロジェクトに対する研究者間の合意が得られているとは言いがたい。政府は重要な岐路に立たされている。
(文=冨井哲雄、田畑元)

日刊工業新聞2018年12月24日

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