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第三のビールで13連敗、キリンがやっと打ったヒットの方程式

「本麒麟」で科学的マーケティング、ブランドを資源配分
第三のビールで13連敗、キリンがやっと打ったヒットの方程式

商品の売り場づくりも科学的分析と調査に基づいて進める

 「『本麒麟』のポテンシャルはこんなものではない」。キリンビール社長の布施孝之は断言する。同社は第三のビールで「のどごし〈生〉」というトップブランドがあり、本麒麟はこれに麦系の柱が加われば「(市場での)景色が変わる」として投入した。期待通り、本麒麟はのどごしに次ぐ、13年ぶりの大型ヒット商品となった。この要因を「お客さまのニーズを徹底的に追求した」と、マーケティング力の裏打ちがあることを力説する。

 これまでも第三のビールで麦系の新商品を13ブランドも投入してきたが、どれもがうまくいかなかった。そこで執行役員マーケティング本部長の石田明文は「布施の方針に沿って、お客さまをより深く、論理的に理解できるようにマーケティング力を高めることに注力した」と明かす。

 まず過去の13商品について徹底的なレビューを実施。消費者のニーズにマッチしなかった要因を詳細に分析した。そして第三のビールに求められているのは本格的なビールと遜色のない中身づくりという結論に達した。

 さらに商品開発に加えて営業の現場へも一貫したマーケティング力の浸透を図った。従来のスーパーマーケットなどでの売り場づくりでは担当者の感性に任せていた。これを転換し、科学的分析・調査に基づいた売り場づくりを徹底させた。

 料飲店での販売も同様で来店者は飲んだブランドまで覚えていないケースが多い。石田は「お客さまにブランドが届くかどうかが重要であり、これらすべてをデータで裏付けるようにした」という。

 もう一つの変化が、「絞りの効いたマーケティング」の実践だった。以前は、広告を含めてすべてのブランドに資源を投入する総花的なマーケティングだった。これを「勝負するブランド」と「維持するブランド」に分けて資源配分するようにした。

 石田は「こうしたマーケティング力の向上により、ブランドが成功する確率が高まった」と胸を張る。さらに顧客の変化に対応するスピードを上げると先を見据える。
(敬称略)
日刊工業新聞2018年12月7日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
現在、日刊工業新聞で「挑戦する企業 キリンホールディングス」編を連載中です。興味のある方はぜひご覧下さい。

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