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日立の「英国原発」、計画延期か撤退か?

日立の「英国原発」、計画延期か撤退か?

日立の東原社長

 日立製作所が英国で進めている原子力発電所の建設計画をめぐり、2019年中としてきた建設に関する同社の最終判断が遅れる可能性が出てきた。日立は年内に、実施主体の英原発子会社に出資する企業の選定にめどを付ける方針だったが、複数の関係者は16日までに「年内の出資企業確保は困難」と指摘した。このため、最終判断が遅れ、20年代前半を目指す運転開始時期も延期されかねない情勢だ。

 日立は英原発子会社を通じ、20年にも英中西部のアングルシー島で原発2基の建設工事に着手する計画。ただ、同子会社への出資比率を現在の100%から50%未満に引き下げ、経営リスクを抑えることが前提となっている。しかし、関係者によると、日立が採算確保に向け、英政府に資金支援などを求めてきた交渉は決着しておらず、本格的に出資企業を募る段階に至っていないという。

日刊工業新聞2018年12月17日



「経済合理性を最優先」


 日立製作所の東原敏昭社長兼最高経営責任者は8日、都内で開いた投資家向け説明会で、英国で進める原子力発電所の建設計画について、「日立は一民間企業。経済合理性を最優先に交渉に臨みたい」と強調した。日立が英国政府と事業化に向けた本格交渉に入ることで基本合意して以降に東原社長が英原発に発言したのは初めて。2019年内に着工の可否を最終判断する。

 英国が交渉に入ったことを表明したことには「我々の協議の内容を確認するものとして歓迎したい」と述べた。

 日立製作所は英国政府と英中西部アングルシー島での原発新設計画を進める。3兆円規模の事業費のうち、2兆円程度を英国側が融資する。残りの約1兆円を日立、英政府と英国企業、日本の政府系金融機関や電力会社の3陣営で等分して投資する方向で検討する。

日刊工業新聞2018年6月9日



「発電所をつくる場が欲しかった」


 日立製作所の羽生正治執行役常務は30日会見し、英原子力事業会社ホライズンの買収について「プラントメーカーとして発電所をつくる場が欲しかった」と述べた。政府系金融機関など広く出資を募り、出資比率を50%以下に引き下げたい方針だ。

 ―どう事業のスキームを描きますか。
 「ホライズンは原発の運営会社であり、人材などを拡充して事業会社として育てる。日立は投資家であり、電力会社からEPC(設計・調達・建設)業務を受ける」

 ―原発会社を運営する事業面でのリスクは。
 「原子力発電事業をやるわけではなく、発電所をつくる場が欲しかった。炉型を改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)にしてもらえれば買収する意思を伝えていた。一定の投資回収を求めるが大きな期待をもたない」

 ―リトアニアなど他国の交渉の進捗状況は。
 「リトアニアが原子力新設計画を継続するならば当社は付いていく。英国と時期が重なっても日本で複数プラントを並行して手がけた例ある。能力的、実績的に心配していない」

 ―投資回収の時期は。
 「18年で償却を考えている。建設が了承されるまでの5年間は人件費など発生するが膨大な金額にはならない。建設が始まればそれなりの金額になり、一社で賄うの大変だ。投資家を募るため魅力ある会社に育てられるかが一番の肝だ」

日刊工業新聞2012年10月31日


明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 東京電力ホールディングス(HD)や中部電力が出資を見送る可能性がある。ABWRのオペレーターである主要電力会社が参画しないとなると、本プロジェクトの遂行はかなり困難になるだろう。  東電HDの会長は日立の社長・会長を務めた川村氏。だからこそウェットにはできない。川村さんが日立会長を退く直前(14年春)にインタビューした時、英国原発のことも語っている。以下。  「沸騰水型軽水炉(BWR)に相当な危機感を持っていた。海外のインフラでは鉄道で大きなプロジェクトを経験しているし、発電でも一つ必要。前にUAE(アラブ首長国連邦)の原発案件を韓国勢に奪われた。今にして思えばその失注で、先進国に出ることになった。新興国でやれれば勉強になるが、さすがにまだ怖い。ただ英国の原発事業は何も結果オーライではなく、相当な損金を出して撤退する可能性もゼロではない」

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