“8000億円の買い物”で日立の送配電事業が再び動き出す
ABBの部門買収へ最終調整
日立製作所はスイスのABBのパワーグリッド部門を買収する方向で最終調整に入った。買収額は最大で8000億円規模に達する可能性もある。実現すれば送配電事業では世界首位に立つ。
再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電の重要性は増す。買収をてこに海外市場の開拓を加速する。
送配電部門の一部あるいは全体を買収することで協議を進めている。今後、資産評価に入り、具体的に経営統合をどのような形にするかなど詳細を詰める。
ABBのパワーグリッド部門の売上高は約100億ドル。ABB全体の中では利益率が劣っており、売却により事業構成を見直し、産業ロボットなどに注力する。すでに発電事業は売却している。
送配電事業は今後も新興国での需要が見込める。先進国でも出力変動が大きい太陽光発電などの導入が増え、系統安定化のために存在感が増す。
日立とABBは2015年に日本国内向けの高圧直流送電事業の合弁会社を設立している。
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これから重電メーカーはどうなるの?
日立製作所は2012年3月末までに富士電機、明電舎との電力系統変電事業の合弁を解消する検討に入った。合弁設立時には変電事業は不採算部門だったが、海外のインフラ投資の拡大やスマートグリッド(次世代電力網)の追い風を受け、送変電・配電事業は成長市場になっているため。変電事業を取り込むことで、送変電・配電の自社での一貫体制を整え、世界に打って出る。
00年初頭、電機各社の不採算部門の事業統合は活発化し、変電事業も例外でなかった。国内の変電機器市場は電力会社の投資抑制などが響き、90年代初頭のピーク時の半分に縮小。00年に誕生した東芝・三菱電機連合を追うように、日立は01年に富士電機、明電舎と3社合弁で日本AEパワーシステムズを設立。日立が5割、富士電機が3割、明電舎が2割出資した。
ただ、当時、お荷物だった変電市場の環境は激変。AEパワーの主力の変電所向けの変圧器や開閉装置は中国をはじめとする新興国での、電力インフラの整備に伴い需要が増加。また、スマートグリッド市場の立ち上がりで、有望市場になりつつある。特に、発電分野を手がけ電力インフラを経営の軸とする日立が海外での投資の過熱を前に、一度は見切った変電事業に再び興味を持つのは当然だ。
実際、ほぼ同時期に事業統合に動いた東芝・三菱電機連合は折半出資会社を05年に解散。結果的に両社は系統変電事業をいち早く本体に戻した形になり、現在は重要な収益源となっている。
日立は合弁解消で、意思決定を迅速化し、自社で成長市場の需要の取り込みを狙うが、課題も少なくない。変電市場は国内は設備の更新や保守が中心のため、伸びしろがあるのは海外市場。ただ、国内勢はコストでは独シーメンスやスイスのABBなど欧州勢には対抗できていない。何を武器に、どのエリアで戦うか鮮明にすることが求められる。
再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電の重要性は増す。買収をてこに海外市場の開拓を加速する。
送配電部門の一部あるいは全体を買収することで協議を進めている。今後、資産評価に入り、具体的に経営統合をどのような形にするかなど詳細を詰める。
ABBのパワーグリッド部門の売上高は約100億ドル。ABB全体の中では利益率が劣っており、売却により事業構成を見直し、産業ロボットなどに注力する。すでに発電事業は売却している。
送配電事業は今後も新興国での需要が見込める。先進国でも出力変動が大きい太陽光発電などの導入が増え、系統安定化のために存在感が増す。
日立とABBは2015年に日本国内向けの高圧直流送電事業の合弁会社を設立している。
日刊工業新聞2018年12月13日
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これから重電メーカーはどうなるの?
「AEパワー」合弁解消
日立製作所は2012年3月末までに富士電機、明電舎との電力系統変電事業の合弁を解消する検討に入った。合弁設立時には変電事業は不採算部門だったが、海外のインフラ投資の拡大やスマートグリッド(次世代電力網)の追い風を受け、送変電・配電事業は成長市場になっているため。変電事業を取り込むことで、送変電・配電の自社での一貫体制を整え、世界に打って出る。
00年初頭、電機各社の不採算部門の事業統合は活発化し、変電事業も例外でなかった。国内の変電機器市場は電力会社の投資抑制などが響き、90年代初頭のピーク時の半分に縮小。00年に誕生した東芝・三菱電機連合を追うように、日立は01年に富士電機、明電舎と3社合弁で日本AEパワーシステムズを設立。日立が5割、富士電機が3割、明電舎が2割出資した。
ただ、当時、お荷物だった変電市場の環境は激変。AEパワーの主力の変電所向けの変圧器や開閉装置は中国をはじめとする新興国での、電力インフラの整備に伴い需要が増加。また、スマートグリッド市場の立ち上がりで、有望市場になりつつある。特に、発電分野を手がけ電力インフラを経営の軸とする日立が海外での投資の過熱を前に、一度は見切った変電事業に再び興味を持つのは当然だ。
実際、ほぼ同時期に事業統合に動いた東芝・三菱電機連合は折半出資会社を05年に解散。結果的に両社は系統変電事業をいち早く本体に戻した形になり、現在は重要な収益源となっている。
日立は合弁解消で、意思決定を迅速化し、自社で成長市場の需要の取り込みを狙うが、課題も少なくない。変電市場は国内は設備の更新や保守が中心のため、伸びしろがあるのは海外市場。ただ、国内勢はコストでは独シーメンスやスイスのABBなど欧州勢には対抗できていない。何を武器に、どのエリアで戦うか鮮明にすることが求められる。
日刊工業新聞2011年8月1日