NTTが全米100都市でスマートシティ化、狙う差別化戦略

2023年までに累計10億ドル売り上げへ

 NTTは2019年から人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を用いて米ラスベガス市をスマート化する事業を商用化すると正式発表した。さらに米ネバダ州政府ともスマートシティー(次世代環境都市)化で覚書を交わした。その背景には、同事業で得たデータをNTTの所有とせずに地方自治体のものとした競合他社との差別化戦略がある。

 「ラスベガス市がデータを活用して政策を決めたり、オープンデータとして他の都市や州に提供し、より膨大なデータベースにしたりするお手伝いをする」―。NTTの澤田純社長はラスベガス市がデータ所有権を持つ利点をこう説明する。

 ラスベガス市の商用化システムは、ダウンタウンに監視カメラや音響センサーを計30台配置。NTTのビッグデータ(大量データ)収集基盤「コグニティブ・ファウンデーション」を用いて群衆の動きや量、交通状況、事件性の高い音声などをデータセンターに集めてAIで分析する。澤田社長は「ビッグデータ収集基盤は非常に柔軟で、他社のIT機器やソフトウエアと連携できる点がネバダ州政府からも評価された」と話す。

 ラスベガス市はスマート化システムを治安改善だけでなく、渋滞情報の提供、顔認証を用いた迷子探索、競技場での観客向け決済サービスなどにも使うことを検討している。そうした機能拡張も他社システムと連携可能なNTTのビッグデータ収集基盤を使えば柔軟に対応できる。

 例えば米国の自治体が競技場でスマートフォン決済サービスを始める際も、ベライゾンやAT&Tなどが提供する第5世代通信(5G)とNTTのビッグデータ収集基盤が連携したサービスが提供可能になる。ビッグデータ収集基盤で集めたデータを自治体が所有することで都市計画全体の策定にも活用できる。この動きがネバダ州や全米各都市に広がれば、各都市のデータを融合した巨大なデータベースが誕生することになる。

 澤田社長は「23年までに全米100都市に導入し、累計10億ドル(約1100億円)の売り上げを目指す数値目標が米国の営業部隊から上がってきた」と明かす。今後、欧州やアジアにも水平展開する意向だ。製造業向けにもデータ収集基盤を活用して複数の工場の自動化システムをつなぎ、さらなる生産効率化を実現するサービスの提供も目指す。
(文=水嶋真人)

日刊工業新聞2018年12月12日

  

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