3社連合の枠組みに干渉強める仏政権、労働者の反発も影響か

日産の“高い壁”

 日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の3社連合の枠組みなどをめぐり、マクロン仏大統領が干渉を強めている。11月末には安倍晋三首相に直談判し、安定的な関係の維持を求めた。背景には仏政権の支持率低下がある。仏メディアは4日、燃料税増税に抗議する仏各地の大規模デモを沈静化させるため、仏政府が増税を一時停止すると発表。仏政権は3社連合の問題についても有権者の利益を追求した選択を求められるのは必至で、ルノーとの資本関係を見直したい日産にとって高い壁になる。

 日仏両首脳は11月末、ルノーの筆頭株主である仏政府の要請を受けて会談を実施した。安倍晋三首相が今後の3社連合について「民間の当事者間で決めるべきものだ」と述べたのに対し、マクロン大統領は「連合維持と安定性を強く望む」と主張。ルノーによる支配的な体制を維持したい仏政府の思惑が透けて見えた格好だ。

 ルノーに出資する仏政府と、日産と資本関係がない日本政府の立場の違いが浮き彫りになったのか、日本政府が敢えて表立った言動を避けたのかは明らかではない。

 仏政権が3社連合への関与を強めるのは、自国の景気浮揚と雇用対策という側面が強い。フランスでは長らく景気が停滞し、雇用の維持・確保を求める声が強まっている。みずほ総合研究所の吉田健一郎欧米調査部上席主任エコノミストは「2018年に入り、先行きの不透明感に伴って雇用は伸び悩み、製造業を中心に低下している」と話す。

 マクロン大統領は17年の就任以降、経済の活性化に向けて構造改革を断行。労働者を解雇しやすくする法改正や公務員の削減を進めた。だが改革の恩恵に乏しい労働者が反発し、燃料税引き上げ表明を契機にデモが頻発する事態に陥った。支持率は就任当初の60%台から20%台に落ち込んでおり、政策運営でこれ以上の失敗は許されない状況にある。

 3社連合の資本関係が見直され、対等な立場を求める日産の主張が通れば、ルノーの影響力が低下するのは間違いない。自国内で雇用や経済への不安が一段と高まり、仏政府は政権を維持できなくなる恐れがある。自国民の不安を解消し、日産に対して弱腰との批判を避けるには、干渉する姿勢を続けるしか手はない。

 第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは「ルノーの国内雇用は4万8000人弱と大きく、自動車産業は裾野が広いだけにその影響も大きい。介入をやめないだろう」と指摘する。マクロン大統領は経済政策に失望する自国民をなだめながら、外交問題に発展した3社連合の問題にどう対処していくのか。判断を誤れば政権の致命傷になりかねないだけに、日産が求める資本関係見直しのハードルは相当高い。

 日産前会長のカルロス・ゴーン容疑者逮捕を“クーデター”と形容する向きもある。仮にそうなら、クーデターのシナリオを描いた人物は今回のフランスの大規模デモまで予想していたのだろうか。シナリオが修正を迫られようとしている。
(文=敷田寛明、吉田周示)

日刊工業新聞2018年12月5日

  

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