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スズキ、日産との関係混沌。かつて蜜月も今は「お客さん」

過去には2人のカリスマ経営者のしたたかなかけひきも
スズキ、日産との関係混沌。かつて蜜月も今は「お客さん」

両社の関係は今後さらに希薄になる可能性が高い(鈴木修会長)

 2017年にトヨタ自動車との業務提携で合意したスズキだが、過去には日産自動車と提携する可能性もあった。しかし、その度に日産のカルロス・ゴーン容疑者とスズキの鈴木修会長という2人のカリスマ経営者のしたたかなかけひきや、日産とルノーの主導権争いに翻弄(ほんろう)され、何度も浮かんでは消えた。

 06年春。経営不振に陥った米ゼネラル・モーターズ(GM)が保有していたスズキ株を放出すると、日産はこの機を逃さなかった。日産にとり、スズキの軽自動車とトップシェアを持つインド事業は魅力的だった。

 両社は同年6月に業務提携関係の拡大を発表。記者会見で日産の志賀俊之最高執行責任者(COO、当時)は「提携拡大を持ちかけたのは日産から」と打ち明け、GMという後ろ盾を失ったスズキもこれに応じた。両社はスズキから日産への国内での軽自動車供給や、インドでの協業について合意した。

 提携発表後は、スズキ本社に頻繁に日産の技術者や調達担当が出入りするようになり、大部屋で活発な議論を交わした時期もあった。しかし、半年もたたずに蜜月関係に亀裂が入る。原因はスズキが“聖域”とするインド事業だった。

 日産は同年11月に、スズキとインドで生産協力する検討を打ち切ると発表。日産はルノーと共同でチェンナイ市に自前の工場建設を決めた。ある関係者は「スズキと日産はほぼ合意していたが、ルノーの横やりが入った」と話す。

 海外提携の第1弾となるはずだったインドでの協業。プロジェクトの挫折は、“インド自動車産業の父”とも呼ばれる鈴木会長の顔に泥を塗る結果となり、両社の関係にしこりを残した。

 一方で、両社は一部車種の相互OEM(相手先ブランド)供給を現在も継続する。ゴーン容疑者の逮捕を受け、日産とルノーの提携関係が今後、どう変化するか。ただトヨタという強力な後ろ盾を得たスズキにとり、今の日産はOEMの車種を買ってくれる「お客さん」(鈴木修会長)。両社の関係は今後さらに希薄になる可能性が高い。
日刊工業新聞2018年11月23日

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