金融業界に風穴空くか、LINEが起こす地殻変動

銀行業に参入、保険や証券も

 LINEが金融界で存在感を強めている。27日にみずほフィナンシャルグループ(FG)との共同出資で、銀行業への参入を発表。保険や証券などにも事業を広げており、従来の金融機関が攻めあぐねてきた若年層との強力な接点と、巨大な顧客基盤を武器に攻勢をかける。既存の金融機関は、巨大な顧客基盤を有するITプラットフォーマーとどう対峙(たいじ)すべきなのか。LINEが起こす地殻変動は、金融業界の勢力図に風穴を開けそうだ。

圧倒的ユーザー


 「今の金融サービスは10年前の仕組みだ。現在に適したサービスを開発し、当社らしいサービスを展開できないか考えている」。LINEの出沢剛社長は新銀行設立の意義をこう強調する。そのらしさを支えるのは「圧倒的なユーザー接点を持っている」(出沢社長)こと。対話アプリ「LINE」で築き上げた約7800万人もの顧客基盤を活用し、スマートフォンによる決済サービス「LINEペイ」など生活密着型の金融サービスを広げてきた。

 「顧客目線でのサービス開発」(同)も金融サービス拡大の武器にしてきた。銀行の参入に当たっても、若年層を中心に支持を得た使いやすさを売りにして、新たな金融サービスを模索する。利用者数の頭打ちを受けて事業の多角化を図るLINEにとって金融業の重みは増している。

決済と与信支援


 一方みずほFGはLINEと組んで、若年層向けをてこ入れするとともに、異業種による銀行業への進出を支える。準備会社の出資比率を49%に留めたのも、岡部俊胤執行役副社長が「我々は黒子であり、決済と与信の部分をサポートしたい」と説明する通り、そのリターンとしての持分法利益を提携の柱に据えたためだ。

 収益力回復が課題のみずほFG。少額の出資で成長著しい異業種の経済圏に入り込み、非金利収支の拡大につなげたい思惑がある。低金利の継続や人口減で国内リテール事業が厳しさを増す中、LINEとの連携に光明を見出す。

 貯蓄から資産形成が叫ばれる中で攻勢を強める証券業界。ただ対面型の証券会社では、70歳代以上の顧客が多く、新たな客層の獲得が課題だ。野村ホールディングス(HD)もLINEと組んで、6月にLINE証券の準備会社を設立した。LINEが抱える若年層は“資産形成層”とされ、野村HDも新しいアプローチができる。

協調か競合か


 保険業界では損保ジャパン日本興亜が10月、業界初となるLINE上での個人向け保険を発売。自動車保険や火災保険の販売も検討しており、将来は生命保険も視野に入れているようだ。損保は代理店網が確立されている一方で、ネット販売も拡大している。その中でLINEが有力な販売チャンネルに成長するか注目される。

 ITプラットフォーマーの持つ顧客基盤に、金融業界が熱視線を送る。プラットフォーマーの躍進に、金融機関は協調するのか、あるいは競合するのか。その判断が業界の将来を占う試金石になるのは間違いない。

 

(文=長塚崇寛、浅海宏規、小野里裕一、大城蕗子)

日刊工業新聞2018年11月29日

  

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