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3社協議、論点となる日産・ルノー協定の要点まるっと紹介

日産幹部「日産に有利な項目も複数あるようだ」
 日産自動車・仏ルノー・三菱自動車の3社連合が29日にも、それぞれのトップが参加する会合をオランダで開く。支配力強化を狙うルノーと、独立性を高めたい日産とで綱引きが始まっており、会合でも3社連合の関係見直しが俎上(そじょう)にのぼるとみられる。株式を持ち合う両社の間には、互いの経営への関与や出資に関する協定がある。今後の3社連合の関係見直し議論の行方にも影響を与えそうだ。

 日産・ルノーが結ぶ協定「改定アライアンス基本合意書(RAMA)」について、日産関係者は「(ゴーン容疑者逮捕をきっかけに)詳細を知った。日産に有利な項目も複数あるようだ」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。

 ルノーは日産に43・4%出資し議決権を有する一方、日産のルノーへの出資は15%に留まり議決権はない。日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は「ルノーとの関係は対等ではない」と発言。3社連合トップにはルノー最高経営責任者(CEO)が就くとの規定についても、ある日産幹部は「個人的には見直した方が良いと思う」と話す。

 日産がルノーとの関係見直しに前のめりになる背後には、RAMAの存在があるとみられる。日産は次に開く株主総会でゴーン容疑者と、同じく逮捕された元代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の両者を取締役からも外す意向だ。

 新たにルノーが推す取締役が選任される可能性はあるが、RAMAの規定に沿えば取締役会では日産出身者が多数派を維持できる。またルノーが日産への出資比率を引き上げるためには日産の合意が必要との規定もある。

 取締役の報酬や人事権を掌握し「逆らえばサヨウナラ(だけで人を切れる)」(日産幹部)というレベルまで自身に権力を集中させたゴーン容疑者が、RAMAを形骸化していた側面があるとみられる。ゴーン容疑者が退場し、仕組みの上では現状以上にルノーが日産への支配力を高めるのは困難になった。

 日産が「対等な関係」の構築に向けテコとして活用できるのは、ルノー株の買い増しだ。日本の会社法により、ルノーへの出資を25%以上に高めると、ルノーの日産への議決権が消滅する。ルノー株買い増しはRAMAの規定で日産だけで決議できる。ただ、その実行には「日産の経営判断にルノーによる不当な干渉を受けた場合」との条件が付く。返り討ちを警戒しルノーが動かなければ、日産はこの伝家の宝刀を抜くことはできない。ルノー名誉会長のルイ・シュバイツァー氏は19日のゴーン容疑者逮捕の直前、日刊工業新聞の取材に応じ3社連合の関係について「現状維持がベスト」と強調していた。大山鳴動してネズミ一匹―という決着も想定される有力シナリオの一つだ。

  

(文=後藤信之)
日刊工業新聞 2018年11月29日

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