ロボット研究の最高峰、ヒト型のハードルが下がってきた

産総研と川重がハード・ソフト基盤整える

 ヒューマノイド(ヒト型ロボット)の開発環境が急速に整備されている。川崎重工業は転んでも壊れない身体と、バランスを崩さない姿勢制御ソフトを開発した。産業技術総合研究所はヒューマノイドの動作を作る制御基盤を構築し提供している。多くの駆動部をもつヒューマノイドの制御が技術者1人でもできるようになり、オープンイノベーションを興す環境は整いつつある。

 ヒューマノイドはロボ研究の中で最高峰といわれる。30―40個の駆動部を動かし、同時に姿勢バランスを保つには高度な制御技術が必要だ。転倒すると高価な特注部品が壊れるなど、ハードとソフトの両面でさまざまなハードルがあり、ヒューマノイドの研究者は限られていた。

 だがこの状況が覆ろうとしている。川重は量産品の産業用ロボのモーターでヒューマノイド「Kaleido(カレイド)」を開発、制御ソフトの整備を進める。10月開催のワールド・ロボット・サミット(WRS)ではカレイドがダンスを披露した。片足立ちから忍者やキックなど複数のポーズを決め、バランス制御の安定性を示した。川重の大熊敏也理事は、「(大学や研究所の)ハードウエアの開発負担を大きく減らせる」と利点を説く。

 産総研は重作業向けヒューマノイド「HRP―5P」を開発した。10キログラム以上の石こうボードを抱え上げ、施工作業を自動化する。産総研の河井良浩知能システム研究部門長は「ヒューマノイドの制御ソフトなどの基盤技術は幅広いロボに使える」という。実際に産業用ロボの動作教示への応用が進む。

 また、WRSの競技「トンネル事故災害対応・復旧チャレンジ」では、産総研の制御基盤ソフトが4脚ロボ「WAREC(ワレック)」に応用された。WARECは4本の脚が腕にもなる。脚1本ごとに7カ所の駆動部があり非常に多彩な動きが可能だ。ただ制御が難しい。WARECでWRSに参戦したMIDアカデミックプロモーションズ(千葉市稲毛区)の松坂要佐社長は「本来、1人で操縦するのは不可能。産総研の制御基盤のおかげで、どうにか操縦できる」と苦笑いする。

 1人運用に加え、その場でプログラムを書いて動作を実装した。2本の腕でがれきを挟み、3本目で地面を蹴って、がれきを退かすといった即興コーディングを実現した。

 松坂社長は今後のヒューマノイドなどのロボ研究について、「制御は難しくてもポテンシャルの高いロボが開発されていく。災害現場に1人プログラマーがいるだけで、これまで不可能と思われてきた仕事ができるようになる」と強調する。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2018年11月16日

小寺 貴之

小寺 貴之
11月22日
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ヒューマノイドがネットのショートビデオの中でパフォーマンスするだけでなく、現実の世界で働けるようにしなければなりません。そのためには用途開発とそれを支えるソフトウエア基盤、壊れない身体が重要になります。誰でも使える訳ではありませんが、ハードルは下がってきました。大学での研究が広がってもいいフェーズだと思います。

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