ANAとJAL、「飲酒」防止へ打つ手はあるのか?

「抜け穴」どう防ぐ

 航空各社でパイロットの乗務前飲酒に起因する運航便遅延問題が相次いでいる。表面化していなかっただけで乗務予定パイロットの飲酒による離陸前の交代や、それに伴う遅延が年数件起きていたことも分かった。乗務前検査のやり方や測定機器の取り扱いに抜け穴はあり、飲酒には比較的寛容だったとも見られかねない。多くの人命を預かって輸送する公共交通の担い手として業界全体に意識改革が迫られている。

 全日本空輸(ANA)グループのANAウイングスは10月25日、沖縄で前夜の飲酒による体調不良で機長が乗務をキャンセルし、交代要員を迅速に確保できず5便に遅延が発生した。日本航空(JAL)は同28日、英国で離陸直前の副操縦士からアルコールを検出して現地当局が逮捕し、通常よりも少ない乗員で運航した。スカイマークも14日、札幌で機長からアルコールを検知して便が遅延した。

 ANAとJALは16日、再発防止策などを国土交通省に報告。ストロー吹き入れ式の呼気検査機配備や第三者による確認、アルコール摂取量の明文化などの施策を盛り込んだ。本人だけでなく周囲の責任も認めた。ANAでは前夜の食事に他の運航乗務員が同席していたが、過度な飲酒を制止しなかった。JALでは同乗予定だった2人の機長が、業務前測定時の相互確認を怠っていた。

 平子裕志ANA社長は「遅延に大きな責任を感じている。(測定機器の導入で)過去5年に飲酒起因の遅延はなかった」と話す。一方で、乗務前にアルコールを検知して乗務員が交代していた案件は同期間に8件あった。10月には、飲酒した社員が自社便で乗客にけがをさせる事件も起きた。

 JALは2017年8月以降、アルコールを検知した事例が19件あり、最大で1時間を超える遅延も発生していた。空港では乗務員の体調不良とアナウンスしていたという。JALでは5月に客室乗務員が乗務中の機内での飲酒も発覚。赤坂祐二JAL社長は「意識教育を徹底していく」と話し、コミュニケーションを深めるための社内飲み会の見直しも視野に入れる。

 安全運航、信頼の回復に向け、飲酒への対応は航空業界全体で考えなければならないテーマになりそうだ。
(文=小林広幸)

日刊工業新聞2018年11月19日

  

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