医療機器の再使用解禁を探る業界の事情

病院会が厚労省に要望書

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病院では安全性を担保した上でSUDを再使用する実態も浮かび上がる
 一度の使用で廃棄する単回使用医療機器(SUD)の再使用をめぐり、医療機器業界が揺れている。日本病院会は厚生労働省に対し、メーカーがSUDとして申請した根拠の明確化などを要望した。病院経営が厳しい中でコスト負担の軽減から、複数回使用でも安全性を担保できるSUDは再使用したいとの思惑がある。一方でSUDの対象は感染リスクなどを踏まえ、メーカーが決めている。今後、両者でSUDの再使用の可能性を模索する方向だが、落としどころを見いだせるか、厚労省を含め柔軟な対応力が問われる。

 日本病院会はSUDにした理由や再使用品として製品化できない理由の明確化などを要望した。厚労省がSUDの再使用を認めておらず、再製造を進める方向に動いていることへの危機感が強いようだ。SUDは製品の添付文書に再使用禁止と記載され、使用済みは廃棄するか、専門業者が回収して適切に再製造した製品を再使用するしかない。再製造品はオリジナルよりも安価に入手できるが、院内滅菌などして再使用する方がコストはかからない。

 日本病院会の末永裕之副会長は添付文書の記載事項について「医薬品医療機器法で承認事項になっておらず法的根拠がない」と指摘する。さらに厚労省は特段の合理的な理由がない限りSUDを再使用しないよう通知したものの、「その解釈があいまい」という。

 これを反映し、日本病院会のアンケートによると、全体の5割強が「SUDの再利用の実態がある」と回答。病院における医療材料費は上昇傾向にあり、病院によっては薬剤費との比率が逆転している。そのため使用済みSUDを廃棄したり、再製造向けに出したりするのではなく、再使用を進めたい意向だ。

 複数回使用でも安全性を担保できると考えるSUDとしてスキンステープルの除去器や酸素吸入マスク、電気メスのハンドピースなどを挙げる。SUDの根拠を明らかにした上で、その対象を再検証する必要性を訴える。

 一方、メーカーの立場でいえば「構造が複雑で院内滅菌だけでは洗浄しきれない」「何回も消毒滅菌すると部材が劣化しやすい」といった製品の特性を考慮してSUDを決めている。ただ当然、SUDの再使用が広がればメーカーにとって収益への影響は大きい。

 メーカーなどで構成する業界団体、単回医療機器再製造推進協議会の武藤正樹最高顧問(国際医療福祉大学大学院教授)は「メーカーはSUDにした理由を明らかにしておらず、情報開示は大事。一方で再使用の実態や院内滅菌のあり方など、この問題をどのように整理するかを考える必要がある」と話す。

 厚労省は2017年に使用済みSUDを適切に再製造すれば、再使用を認める制度を導入。今後、新たなSUD市場が形成され、企業間の競争も活発化する。市場転換期にある中でSUDのあり方を再点検し、互いに妥協点を探しながら安全に運用できる仕組みの構築が欠かせない。

 

(文=清水耕一郎)

日刊工業新聞2018年11月20日

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