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楽天越えなるか、ドコモが“経済圏”拡大へあの手この手

携帯料金に頼らない収益源を強化
楽天越えなるか、ドコモが“経済圏”拡大へあの手この手

新サービスを発表した(左から)マネーフォワードの辻庸介社長、NTTドコモの吉沢和弘社長、新生銀行の工藤英之社長

 NTTドコモが、顧客識別手段を、従来の携帯電話番号から、自社ポイントサービス「dポイント」利用時に使うdアカウント中心に切り替えた。狙いはネット通販や資産運用、金融など各種サービスをdアカウント経由で提供する“ドコモ経済圏”の拡充だ。政府による携帯電話料金の引き下げ圧力が強まる中、携帯電話料金だけに頼らない収益源の強化につなげる。

 「9月に会員数が6700万人を超え、日本最大級のポイントサービスに成長した」。NTTドコモの吉沢和弘社長は12月に3周年を迎えるdポイントの拡大ぶりをこう評価する。9月末時点の会員数は前年同月比439万人増の6763万人と、先行するTポイント会員数の6788万人とほぼ肩を並べた。

 要因の一つは、ポイント提携先が322と前年同月比で倍増したことだ。dポイントが使える店舗数も約4万1900店舗に増えたことで「4―9月期の利用ポイントが794億ポイントになった」(吉沢社長)。794億ポイントの45%がローソンやマクドナルド、高島屋など提携先での利用という。

 11月23日からは計約30億ポイント分のポイントアップキャンペーンなどを大々的に実施する。ドコモが運営する通販サイト「dショッピング」のパートナー数も19年3月までに現状比3倍に増やす。

 ポイントや通販以外でもdアカウントを使ったサービスを充実させている。5月に始めたdポイントを使った投資体験サービスの利用者は30万人を突破。人工知能(AI)を用いて資産運用をアドバイスする「テオプラスドコモ」も始めた。

 10月にはNTTドコモユーザーの利用情報を基に、信用スコアを自動算出する金融機関向け融資基盤「ドコモ・レンディングプラットフォーム」を発表。その第1弾として、新生銀行が2019年3月に同プラットフォームを活用した融資サービスに乗り出す。

 加盟店で買った商品の支払いをスマートフォンに表示したバーコードで決済できる「d払い」も早期に10万店への導入を目指す。

 吉沢社長はドコモ経済圏の拡大について「会員にさらなる価値を提供できる好循環を生み出すためだ」と説明する。dポイントをためて使ってもらうことで、dカードなどの自社決済や回線契約者が増え、顧客基盤に集まる情報もより緻密化される。こうして集めた購買データを基に、ドコモやポイント加盟店が顧客の住む地域や属性に最適なマーケティングを行うことで、双方が売り上げを伸ばせるようになる。

 19年秋には、第4の携帯事業者として楽天が参入する。ネット通販に強みを持つ楽天に対抗するためにも、6月末時点の楽天のID数9870万人超えが当面の目標になりそうだ。

 

(文=水嶋真人)
日刊工業新聞2018年11月16日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
“経済圏”の拡大を急ぐのは他の携帯大手も同様です。その中で楽天と提携したKDDIが、提携によってEC事業や決済事業などを強化することで「au経済圏」を広げられるのかが注目されます。

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