関西経済の活性化へ、大阪市のベンチャー支援が成果を挙げている

手厚い支援でエコシステムの充実を目指す

「エコシステム」基盤整う


 大阪市が運営するベンチャー企業を後押しするプログラムを、9人の起業家が“卒業”した。5期目の今回は資金調達件数が11件、調達総額は3億8410万円。1期目からの累計資金調達は約31億円。事業構想から起業、事業化、新事業への再投資といった好循環は「ベンチャーエコシステム」と呼ばれ、関西経済を活性化すると期待される。6期目が13日に始まる。エコシステムの基盤として機能し始めている。

 大阪市のベンチャー支援事業「シードアクセラレーションプログラム」は、市が技術革新の創出を狙い2013年に設置した大阪イノベーションハブ(北区)を拠点に進める。創業前後や事業を本格化する段階のベンチャー育成が狙い。期間は約4カ月。具体的には助言者による面談や定期的な研究会、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家、大企業に資金調達や連携を提案する機会もある。

 同市経済戦略局の馬越宏輔イノベーション担当部長は、「これまで参加した企業は、資金調達や事業連携で大きな成果を上げている」と強調する。運営を受託しているデロイトトーマツベンチャーサポート(東京都千代田区)の関西地区リーダーを務める権基哲(コンキチョル)氏によると、「大企業、VCとのメンタリング(助言などの支援)は計158回」。期間中、1社当たり平均17回と、手厚く支援してきた。

 同プログラムに参加したKURASERU(神戸市東灘区)の川原大樹社長は、「VCとのコミュニケーションが円滑で、ネットワークが広がった」とメリットを実感している。KURASERUは、病院から退院する患者と介護施設の橋渡しを手がける。成果発表会の「デモデイ」では、ゲストが選ぶ「メンター賞」と一般参加者が選ぶ「オーディエンス賞」の二つを獲得。事業に対する注目の高さを示した。「病院と介護の連携で生まれる2800億円の市場」を取りに行く。

 空き家活用(東京都港区)の和田貴充社長も、同プログラムで事業の手応えをつかんだ。空き家や空き地の情報を販売。さらに、所有者や企業に活用方法などを提案する。世話役のアクセラレーターからメンタリングを受ける中で、「ビジネスモデルを改良できた」(和田社長)。期間中に6210万円の資金を調達。大企業との提携も進む。

 関西はエコシステムが弱く、ベンチャーが育ちにくいと言われてきた。経済産業省の出先機関である近畿経済産業局は、ベンチャー約1000社の動向を分析した指標を18年度末までに作成する計画。さらに、大手VCが大阪市内に支社を設けるなど、エコシステムを充実する動きが広がりつつある。
(文=大阪・大川藍)

日刊工業新聞2018年11月9日

  

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