シリコンバレーと連携も、神戸市に起業の土壌が形成されつつある

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神戸市は米シリコンバレーから、創業期のベンチャーが対象の投資ファンド「500スタートアップス」を呼び込んだ(育成事業の参加者)
 神戸市が海外の起業家育成ノウハウを取り入れ、特徴あるベンチャー支援を軌道に乗せている。2015年から全国の起業家を対象に米シリコンバレーへ派遣したり、専門家による個別指導を盛り込んだ事業を始めたりした。神戸市主導の支援により15―17年度にかけて、約70社が合計20億円以上の資金調達を見込む。「若者に選ばれるまち」を掲げる神戸市に、起業の土壌が形成されつつある。

米ファンドと連携


 神戸市は15年、久元喜造市長が自らシリコンバレーに赴き、創業期のベンチャーが対象の投資ファンド「500(ファイブハンドレッド)スタートアップス」を呼び込んだ。16年度から神戸市と同ファンドが連携し、ベンチャー支援に取り組んでいる。現在、行政による起業家育成に加え、神戸に拠点を置く企業による支援も後押ししている。

 500スタートアップスの支援事業は、全国の起業家を選考し、約6週間育成する。収益や製品開発に関する講義、シリコンバレーの起業経験者から個別のアドバイスなどを組み込む。最終日は投資家やベンチャーキャピタル(VC)向けなどに発表会を開き、今後の成長へつなげる。

 コンパス(神戸市中央区)は17年8月から育成事業に参加し、直後の10月に創業したITベンチャー。同社の大津愛社長は「アイデアから始まったが、具体的なシステム開発や事業化に必要なステップを踏めた」と話す。これまで資金を3200万円調達した。

 6月にチャット型転職相談サービスをはじめ、人材確保に悩む企業と橋渡しする。「ここまで来られたのは、大手IT企業の新規事業担当者らから、資金調達といった経験に基づいた助言を得られたおかげ」と喜ぶ。

 ホテル事業者向けにオンラインの料金設定サービスを手がける空(そら)(東京都渋谷区)は、松村大貴社長が関東から参加。「日本にいながら、シリコンバレーで成長した起業家から直接ノウハウを得られた」環境に満足げ。支援事業を通じ、3000万円の資金を得た。「国内外の参加者と切磋琢磨(せっさたくま)し、プログラム期間に商談が成立した」成果を強調。一方、「大企業やVCに会うには東京へ行く必要がある」といった、神戸の環境に課題も見えた。

地元IT企業も支援


 地元IT企業の支援も活発。神戸市北区に拠点を置き、法人向けチャットサービスを手がけるチャットワークは5月、同北区の谷上駅にコラボレーションオフィス「ドットミー」を開設。神戸市の「クラウドファンディング型ふるさと納税」制度を活用し、2600万円以上の資金を集めた。今後の運営や、設備導入資金に充てる。

 同制度はインターネットを通じて小口の資金を集めるクラウドファンディングと、寄付者が税制優遇を受けられるふるさと納税を組み合わせた、神戸市の独自政策。

 ドットミーは会員企業や個人が協働し、事業創出やイベント開催など多様な発案の拠点とする。チャットワークの山本正喜社長は「新神戸駅から1駅と利便性が高く、夏は蛍が飛ぶ住まい環境」を持つ土地柄をアピール。「来た人が化学反応を起こし、社会課題を解決するモデルケースにしたい」と語る。

 神戸市は7月、新たな支援事業「アーバンイノベーション神戸」を始める。従来は、起業家の成長に焦点を当てたものが多かったが、同事業は神戸市の地域課題解決が目的。子育て、地域交通、窓口業務の効率化など、八つの課題に行政職員とベンチャーが取り組む。

日刊工業新聞2018年6月18日

COMMENT

これまで3年間の支援事業を通じ、起業家集積や育成の基盤を築いてきた。今回、起業家と市職員が外部の専門家の指導を受けながら、製品やサービスを開発する。10月以降、実証実験して導入を検討する。 (日刊工業新聞社神戸支局・中野恵美子)

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