戸惑いの声も…JPXと東商取の統合“総合取引所”は実現するのか

売買システムの共同化カギ

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東証
 日本取引所グループ(JPX)と東京商品取引所(東商取)が統合を視野に、検討を始めることになった。株式の現物を扱う東京証券取引所や金融派生商品(デリバティブ)を扱う大阪取引所を傘下に抱えるJPXと、原油や金などを上場する東商取。狙いは証券と商品先物を一体的に扱う「総合取引所」の実現だ。ただ、JPX側の主導による一連の動きに東商取からは戸惑いの声も聞かれ、協議は難航する可能性がある。

 7月に開かれたJPXの定例会見。同月に金融庁の新長官に遠藤俊英氏が就き、「総合取引所」への思いを聞かれた清田瞭最高経営責任者(CEO)は、「熱意はずっと持っている。遠藤長官のもとで、何とか取り組むテーマに取り上げてもらいたい」と前向きな姿勢を見せていた。

 株式やデリバティブから貴金属、穀物まで扱う総合取引所の国家的な構想自体は、第1次安倍晋三内閣の2007年までさかのぼる。ただ、両社を所管する官庁の縦割りなどで進展しなかった。

 そうした中、今月、政府の規制改革推進会議が「総合取引所」の実現について、緊急に取り組むべき事項であると位置付けたことで様相が一変。清田CEOは「経済産業省も前向きになった」と風向きの変化を説明する。

 一方、東商取の浜田隆道社長は、「総合取引所構想については常時、JPXと意見交換はしているが、検討の方向性は決まっていない」と強調する。構想はJPXが主体的に検討していることもあって、「具体的な提案があれば真摯(しんし)に検討する」と話すにとどめる。

 日本証券業協会の森本学副会長は「東京証券取引所と大阪証券取引所(現大阪取引所)の関係も難しく、(13年の)JPX傘下での統合では調整に苦労した。先物だけは大証がメーン市場となる提案をした」と振り返る。

 統合には互いの譲歩が必要になる。清田CEOも「実質的に統合できれば、形式にはこだわっていない」と柔軟な姿勢を示す。 

 大阪取引所が東商取に供与している売買システムが、進展を促す公算もある。東商取の浜田社長は「システムは21年9月まで使う。次期システムの共同化については、19年の春から夏までにどうするかを決めないといけない」と話す。共同化で統合のムードが高まれば、時間軸は見えてくるかもしれない。

 出来高の低迷で赤字が続く東商取にとっては、統合は経営改善に向けた有力な選択肢となり得る。ただ、以前から浜田社長は「組織が一緒になれば取引が活性化するとは考えていない」とも述べている。

 先送りになっている電力先物の上場や、液化天然ガス(LNG)などを含む総合エネルギー先物市場の創設を優先課題と見る向きもある。さまざまな思惑が交錯する中で、今後の議論が注目される。

東商取

(文=浅海宏規、田中明夫、大阪・田井茂)

日刊工業新聞2018年10月26日

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