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バスによる宅配便輸送は地元路線を救えているのか

長野・飯綱町、長電バスとヤマト運輸の連携開始から1年が経った
バスによる宅配便輸送は地元路線を救えているのか

長電バスに荷物を載せるヤマト運輸の担当者

 長野県飯綱町、長電バス(長野市)、ヤマト運輸が連携し、路線バスで宅配便も輸送する貨客混載を2017年10月に始めてから1年がたつ。生活路線の維持と同時に物流の効率化を狙いとした取り組みは、それぞれに成果をあげつつある。

 10時過ぎ、ヤマト運輸長野主管支店に入ってきた1台の回送路線バスに、ヤマトの作業員が手際よく荷物を運び込む。長野市内と中山間地域の飯綱町を結ぶ牟礼線の始発前に行われる毎朝の光景だ。

 貨客混載は1日(片道)1便。長電バスの信濃町営業所を出た回送バスは途中、ヤマトの長野主管支店で荷物を載せた後、見晴停留所から終点の牟礼停留所まで6・1キロメートルの路線を貨客混載で走行。再び回送で荷物をヤマトの信州信濃町センターに届けて長電バスの信濃町営業所に戻る。

 牟礼線は乗客が少ない赤字路線。沿線の人口減に加え、マイカーの台頭で利用者が減っている。とはいえ、長野市内への買い物には乗り換えがないバスの方が便利という声も少なくない。

 「生活路線をなんとか維持したい。それも赤字の補填だけでなく付加価値をつける手法はないか」。そう考えた飯綱町が、長電バスとヤマト運輸に呼びかけたのが貨客混載だ。

 バスの空きスペースを活用できる長電バスは生産性が向上。運送と保管の手数料が入る。さらに「長野県では初めての貨客混載の取り組みとして注目されるようになった」(長電バス担当者)。

 支店からセンターに向かうトラック1便をバスに代替できたヤマト運輸は、一部荷物を路線途中の長電バス飯綱営業所で降ろして保管してもらうこともあり、集配効率がそれなりに向上。時間に余裕ができたことで「ドライバーが休憩をしっかりとれるようになり、働き方の改善につながった」(ヤマト運輸担当者)。飯綱町企画課地域振興係の広田勝己担当係長も「劇的にバス路線の赤字が解消できるわけではないが、路線維持などさまざまな効果がある」とする。
(文=長野支局長・縄岡正英)
日刊工業新聞2018年10月17日

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