ネット証券参入20年、松井証券社長に聞く金融イノベーション

松井証券社長・松井道夫氏 

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松井証券公式フェイスブックページより
 20年前の1998年、金融の規制緩和を背景に、松井証券が国内初となる本格的なインターネット取引を始めた。翌年には、株式売買委託手数料が自由化されて価格破壊も進んだ。ネット取引が個人売買の約7―8割以上を占めるとされる中、証券業界の現状をどう見ているのか。当時から社長を務める松井道夫氏に聞いた。

 ―バブル崩壊や「金融ビッグバン」を経て証券業界の環境は一変しました。
 「私が松井証券に入社したのは87年。証券業界はバブルで莫大(ばくだい)な利益をあげていた。しかし、護送船団方式のビジネスでは生き残ることはできない、いずれ自由化は起きるだろうと感じた」

 ―ネット証券参入を決断した根拠は何ですか。
 「前職の日本郵船で激しい国際競争を経験し、コストが価格に反映される厳しさを思い知った。ネット証券への転換は、取引ツールの改善に過ぎない。私が行ったことで、他の企業と本質的に違うことは、コスト構造を見直すために外交セールスを廃止したことだ」

 ―その理由を教えてください。
 「私が松井証券に入った当時、外交員に自分の売りは何かを聞いたら、出てきた答えが誠意だった。その誠意を選ぶのは消費者だ。押しつけの誠意では、誰も買ってくれない」

 ―ネット証券の台頭は価格破壊も起こしました。
 「ライブドア・ショックやリーマン・ショックなど(株式市場が暴落する局面を経て)その都度、過当競争が起きて、手数料は落ちる所まで落ちた。(価格競争は)10年前に終わった世界だ」

 ―業界で新たなビジネスモデルを確立しました。今、イノベーションに求められることは何でしょうか。
 「消費者視点でビジネスを考えることだ。今までは供給者側の論理で評価が成り立っていたが情報の自由化が進み消費者の力が強くなっている。会社の規模は関係なく、安ければ良いというものではない。当社の資産形成支援サービス『投信工房』でも、消費者が認めないコストは取らないことを意識している」

松井証券社長・松井道夫氏


【記者の目/創業100年で記念配当100億円】
 松井社長にとって、ネット証券への転換は、コスト構造を考えた末の結果に過ぎなかった。人工知能(AI)が考えても、AIの言語は数字にすぎず、人は数字だけで表すことはできないと松井社長は強調する。5月に創業100周年を迎え、2019年3月期末に普通配当に加えて総額100億円の記念配当を実施するなど、今後もさまざまな話題を発信しそうだ。(浅海宏規)

日刊工業新聞 2018年10月18日

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