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成功に懐疑の声も…JALのLCC事業は軌道に乗るか

準備会社「T.B.L.」20年夏ダイヤからの就航目指して始動
成功に懐疑の声も…JALのLCC事業は軌道に乗るか

TBLの成功には奇抜なアイデアと人材の両翼が欠かせない

 日本航空(JAL)は7月、国際線中長距離路線を専門とする格安航空会社(LCC)の準備会社「T.B.L.」を立ち上げた。2020年夏ダイヤからの就航を目指し、9日からは運航乗務員の募集も始めた。航空市場が成長力を持続する一方、LCCの台頭によって競争環境が混沌(こんとん)とする中でのJALの挑戦。新たなビジネスモデルを打ち上げ、軌道に乗せることができるか“発射”に向けて準備が本格化する。

 JALの赤坂祐二社長は「ユニークなLCCモデルを作ってほしい」と期待する。TBLは“立ち上げ”の意味「トゥー・ビー・ローンチ」の頭文字だ。西田真吾社長は「とってもぶっ飛んだLCCを作るぞ」とTBLに意気込みをかける。

 JALのLCCには航空関係者から成功を懐疑する声も少なくない。JALはフルサービスキャリア(FSC)としてサービスにこだわり、そこを磨き続けてきた。いまさら低コストを目指すには、大きな発想の転換が必要となる。赤坂社長が「JALっぽくない」と評して西田社長を指名したのも、FSCの発想が染みついていない人材をトップにとの考えからだ。

 西田社長はJALのマイレージビジネスの出身。顧客満足度向上のため、異業種連携によるサービス開発に取り組んできた。最近のヒット商品で、行き先がランダムで選ばれる国内線特典航空券「どこかにマイル」も、前職で若手の発案を後押しして実現させた。

 「2年で黒字」(赤坂社長)との使命達成は、コスト削減や使用機材の稼働率向上といった王道の戦略だけでは難しい。TBLではビジネスモデル創出に向けた議論のまっただ中だ。西田社長は一つの方向性として「BツーB(企業間)で収入を得られないか、研究している」と明かす。

 例として挙げるのがマレーシアのLCC、エアアジアだ。同社はデジタル事業に力を注ぎ、航空運送以外にオンライン旅行会社(OTA)で収益を上げており、ヒントになりそうだ。BツーBの収益源では、ターゲット・マーケティングも視野に入れる。社外企業との協業には、西田社長の経験や人脈が生かせそうだ。LCC新会社はJAL以外から出資者も募る方針。すでに「ノック程度に」(西田社長)打診を受けているという。

 JALっぽくないLCCを目指すとは言え、「安全に関するノウハウは全面的に注入する。形は違うが、そこにある人の思いや精神は同じ」(赤坂社長)とし、JALらしさが根底を支える。成功には奇抜なアイデアとJALで育った人材の両翼が欠かせない。今のJALは自社の成長事業に対応するのが精一杯で、人材が潤沢とは言いにくい。そのため、経営破綻時にJALを去っていった人材にも協力を求めていく考えだ。
(文=小林広幸)
日刊工業新聞2018年10月12日

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