JAL再上場5年、“攻め”の準備整うも慎重になるワケ

「生産資源に限りがある。乗員に無理はさせられない」(植木社長)

 日本航空(JAL)が東京証券取引所に再上場して19日で5年を迎える。目標としていた5年連続の営業利益率10%を達成。収益性を重視した経営で、時価総額は再上場時に比べて倍増した。国による事実上の経営監視期間も3月末で終わり、強固な財務基盤を背景に路線開設や大型投資など“攻め”に転じる準備は整った。だが、JALは依然として慎重な姿勢を崩さない。

 1日朝、成田空港ではメルボルン線開設の記念式典が開かれた。ビジネスと観光でバランス良く利用客が見込め、既存路線との相乗効果が期待できる勝算のある路線だ。満席近い初便の売れ行きに、植木義晴社長は満足げな笑みを見せた。

 成田―メルボルン線は4月に中期経営計画を発表して以降、初の新規就航だった。植木社長は今後の国際線路線網拡大に意欲を示すも「ガンガン(行く)でなくカンカン」とジョークを飛ばす。15日に成田―ハワイ・コナ線も開設したが、積極攻勢とは言いがたい。

 JALは2010年の経営破綻後に公的支援で再生した。国土交通省は、資金投入が競争環境に悪影響を及ぼさないように監視する「8・10ペーパー」と呼ばれる文書を作成。これにより3月末までの新規投資や路線開設が制限されてきた。

 投資家は晴れて自由を得たJALの成長戦略を新中計に待望したが、発表翌営業日の株価は大きく沈んだ。航空需要が拡大する中でも明快な攻め手に乏しいとの評価。ただ現在のJALには、ごく自然な計画とも見える。

 再建で手腕を振るった稲盛和夫名誉会長は京セラで実践した“部門別採算制度”をJALに導入。各職場では社員一人一人が経営者意識を持ち「売り上げ最大、経費最小」に取り組んでいる。常に採算を意識する組織ではリスクを取りにくい。

 成長を持続するには規模拡大も不可欠だ。植木社長は中計発表時に「(今期は)身をかがめるべき時、必ず20年以降に効いてくる」と話した。

 20年には羽田・成田の首都圏両空港で発着枠拡大が見込まれる。1枠当たり年20億円の収益が見込めるとも言われる羽田空港の枠獲得は、業績に大きな影響を及ぼす。

 JALにとって長期的な課題の一つは人材育成だ。植木社長は路線拡大を急がない理由として「生産資源に限りがある。乗員に無理はさせられない」とも説明する。

 15年に再開したパイロット採用は18年に70人を予定。30年にかけてはバブル期大量に採用した社員の退職も想定される。JALは限られた人員と機材を効率的に運用して収益の最大化を狙う。
(文=小林広幸)

日刊工業新聞2017年9月18日

日刊工業新聞 記者

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09月18日
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航空需要は景気の波に大きく左右されるが、現在の姿勢を続ければ再度、危機にひんする可能性は低い。だが攻め時を見誤ると飛躍の好機を逃すことにもなってしまう。
(日刊工業新聞第二産業部・小林広幸)

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