METI
航空機エンジン大手も信頼、「足利の奇跡」を生んだ一点突破の技術力
AeroEdge・森西に聞く「経験を積んで習熟度を上げたからこその結果」
栃木県足利市にあるAeroEdge(エアロエッジ)は、フランスの航空機エンジン製造大手である、サフランエアクラフトエンジンズと契約を果たし、次世代航空機エンジン用の低圧タービンブレードを生産している。2015年設立の歴史の浅い地方の中小企業に、世界的企業が信頼を寄せる理由はどこにあるのか-。受注の経緯、今後の展望を森西淳社長に聞いた。
-現在生産しているのは、次世代航空機エンジン「LEAP」用のタービンブレードとか。「LEAP」は欧エアバスの中型機「A320neo」や米ボーイング「737MAX」などに搭載されているそうですね。
「世界的に人気の高い機体に搭載されるエンジン部品は高い需要が見込まれるだけに、ビジネスチャンスに恵まれています」
-日本の中小企業として初めて、海外の航空機エンジン製造大手との直接取引に成功した姿は「足利の奇跡」などと称されているようです。取引の経緯を教えてください。
「航空機エンジンの部品加工にはチタンアルミや耐熱材合金といった難削材の加工技術が求められます。親会社の菊池歯車(栃木県足利市)は、自動車関連部品の製造を通じてこれら加工技術の蓄積がありました。菊地歯車時代の2005年には国内重工メーカーからジェットエンジンパーツの仕事を受注し、チタンアルミ加工の経験を積んできました」
-とはいえ、航空機分野への参入は容易ではなかったのでは。
「ええ。(航空宇宙向け品質管理規格である)JISQ9100も取得して航空機分野への本格参入を考えたのですが、ブレードやオイルポンプなど希望の仕事が国内に見当たりませんでした。そこで、海外に活路を見出したわけです」
-世界的な大企業から白羽の矢が立ったのはなぜだったのでしょう。
「2006年から構想を温め、2009年以降はパリからエアショーに毎年出展し、チタンアルミ加工の実績や技術力などをアピールしてきました。これらが実り、サフランクラフトエンジンズとの交渉が始まりました。2012年には現在主流のエンジン「CFM56」の後継機となるLEAPの試作で欧米5社と競い合ったのですが、試作品の完成までこぎ着けたのは当社だけでした」
「これまでエンジン部品には、ニッケルという耐熱合金が使用されてきましたが、重量が約半分のチタンアルミという新素材が出てきました。これを安定して加工し、製品にできるのは世界でも数社しかないのです。試行錯誤を繰り返すなか、製品要求を満たした加工に成功し、13年末に契約に辿り着きました。経験を積んで習熟度を上げたからこその結果だと思っています」
-開発力以外で、競争に勝てた要因は何だと思いますか。
「提案力はサフラン側にも驚かれました」
-具体的にどんなことを提案するのでしょう。
「短納期やコスト削減を実現するため、形状や寸法など徹底的にこだわりました。こうしたことも同社が部品加工を初めて日本企業に発注した背景にあるのでしょう」
-2016年に菊地歯車の航空宇宙事業を分社化する形でエアロエッジは設立されました。
「サフランエアクラフトエンジンズと2013年に長期契約を締結することになり、航空機の量産体制を確立するために分社化を決断しました」
-中型航空機エンジンの市場をどうみますか。
「現在は、中型機の開発が世界的に活況を呈しており、それらの50パーセント以上に(私たちが部品製造を手がける)LEAPが搭載されおり、最も売れているエンジンです。こうした航空機エンジン市場に参入できたことは幸運でした」
-今後、どのようなビジネスモデルを目指しますか。
「モノづくりをベースにソフトウエア開発などを手がけたいと考えています。また、非破壊検査など特殊工程にかかわる人材を育成したい。実力のある中小企業でも一貫工程でないと海外からの受注は困難です。幸い当社は各種認証も取得していることから、自社以外の人材も教育し、日本の航空機産業を盛り上げていきたいと考えています」
-中小企業が世界の大手と直接取引するのは、珍しいケースだと思います。これから航空機産業への参入を考える中小企業へアドバイスを。
「航空機産業は、参入障壁が高く、加工品の難易度が高いのは事実です。そのため、入念な準備と戦略的な計画が求められます。強みのある分野に絞り、一点集中で突破していくことが重要ではないでしょうか」
-現在生産しているのは、次世代航空機エンジン「LEAP」用のタービンブレードとか。「LEAP」は欧エアバスの中型機「A320neo」や米ボーイング「737MAX」などに搭載されているそうですね。
「世界的に人気の高い機体に搭載されるエンジン部品は高い需要が見込まれるだけに、ビジネスチャンスに恵まれています」
-日本の中小企業として初めて、海外の航空機エンジン製造大手との直接取引に成功した姿は「足利の奇跡」などと称されているようです。取引の経緯を教えてください。
「航空機エンジンの部品加工にはチタンアルミや耐熱材合金といった難削材の加工技術が求められます。親会社の菊池歯車(栃木県足利市)は、自動車関連部品の製造を通じてこれら加工技術の蓄積がありました。菊地歯車時代の2005年には国内重工メーカーからジェットエンジンパーツの仕事を受注し、チタンアルミ加工の経験を積んできました」
-とはいえ、航空機分野への参入は容易ではなかったのでは。
「ええ。(航空宇宙向け品質管理規格である)JISQ9100も取得して航空機分野への本格参入を考えたのですが、ブレードやオイルポンプなど希望の仕事が国内に見当たりませんでした。そこで、海外に活路を見出したわけです」
-世界的な大企業から白羽の矢が立ったのはなぜだったのでしょう。
「2006年から構想を温め、2009年以降はパリからエアショーに毎年出展し、チタンアルミ加工の実績や技術力などをアピールしてきました。これらが実り、サフランクラフトエンジンズとの交渉が始まりました。2012年には現在主流のエンジン「CFM56」の後継機となるLEAPの試作で欧米5社と競い合ったのですが、試作品の完成までこぎ着けたのは当社だけでした」
「これまでエンジン部品には、ニッケルという耐熱合金が使用されてきましたが、重量が約半分のチタンアルミという新素材が出てきました。これを安定して加工し、製品にできるのは世界でも数社しかないのです。試行錯誤を繰り返すなか、製品要求を満たした加工に成功し、13年末に契約に辿り着きました。経験を積んで習熟度を上げたからこその結果だと思っています」
-開発力以外で、競争に勝てた要因は何だと思いますか。
「提案力はサフラン側にも驚かれました」
-具体的にどんなことを提案するのでしょう。
「短納期やコスト削減を実現するため、形状や寸法など徹底的にこだわりました。こうしたことも同社が部品加工を初めて日本企業に発注した背景にあるのでしょう」
-2016年に菊地歯車の航空宇宙事業を分社化する形でエアロエッジは設立されました。
「サフランエアクラフトエンジンズと2013年に長期契約を締結することになり、航空機の量産体制を確立するために分社化を決断しました」
-中型航空機エンジンの市場をどうみますか。
「現在は、中型機の開発が世界的に活況を呈しており、それらの50パーセント以上に(私たちが部品製造を手がける)LEAPが搭載されおり、最も売れているエンジンです。こうした航空機エンジン市場に参入できたことは幸運でした」
-今後、どのようなビジネスモデルを目指しますか。
「モノづくりをベースにソフトウエア開発などを手がけたいと考えています。また、非破壊検査など特殊工程にかかわる人材を育成したい。実力のある中小企業でも一貫工程でないと海外からの受注は困難です。幸い当社は各種認証も取得していることから、自社以外の人材も教育し、日本の航空機産業を盛り上げていきたいと考えています」
-中小企業が世界の大手と直接取引するのは、珍しいケースだと思います。これから航空機産業への参入を考える中小企業へアドバイスを。
「航空機産業は、参入障壁が高く、加工品の難易度が高いのは事実です。そのため、入念な準備と戦略的な計画が求められます。強みのある分野に絞り、一点集中で突破していくことが重要ではないでしょうか」