観測技術は世界一でも・・・地震調査が直面する課題

東京大学地震研究所教授・平田直氏インタビュー

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**総合的危険性、全国調査が急務
 北海道胆振東部地震の発生から6日で1カ月。主要活断層帯である「石狩低地東縁断層帯」が関連したか議論が続き、まだ結論は出ていない。南海トラフ地震や首都直下地震も迫っているとされるが、地震のメカニズムは未解明な部分が多く、発生する可能性の評価は現在も難しい。政府の地震調査研究推進本部(地震本部)地震調査委員会で委員長を務める東京大学地震研究所の平田直教授に、地震調査の課題と方向性を聞いた。

―6月の大阪北部地震など今年は地震が相次いでいます。地震が増えているのですか。

「発生数も規模も平均的で、増えてはいない。地震の規模を示すマグニチュード(M)7規模の地震は、日本では年1回程度起こる。ただ、気候変動の影響による『極端気象』が増え、そうした気象と合わさって被害が大きく出ている。北海道胆振東部地震も、降り続いた雨を含んだ土壌が揺れたことによる土砂災害で人的被害が出た。また、大阪北部地震のように都市直下で起きればM6級でも停電や交通網の混乱など市民生活、経済活動への影響はきわめて大きくなる。複合的災害として備えを考えていかなければならない」

―地震本部は、地震の発生確率を示す「全国地震動予測地図」を毎年公表していますが、ノーマークの地域で地震が起きている印象があります。

「大阪北部、北海道胆振東部ともに地震発生の危険性は示されていた。ただ、それが正しく理解され、活用されたかは大きな問題だ。ある活断層について『今後30年間の地震発生確率は1%』となっていれば、確率は高く危険と捉えるべきだが、この表現でそう認識できるかというと無理がある。伝え方を変えていく必要がある」

―現在の地震調査のあり方に課題は。

「活断層評価を強調しすぎている。活断層を知ることは重要だが、活断層にとらわれすぎると過小評価につながりかねない。地震本部ができたきっかけは1995年の阪神・淡路大震災。典型的な活断層地震で、これを機にそれまで注目されていなかった活断層について評価や理解が進んだことは良かった。ただ同時に、活断層上だけが危ないという誤った認識を与えてしまった」

「活断層周辺は広く地震が起きやすい状態で、地域全体でみた地震発生確率はもっと高い。そのため、個別の活断層評価でなく、周囲の活断層を含めて地域の危険性を総合的に調べる『地域評価』が重要だ。地域評価は九州、中国、四国、関東地方しかできておらず、全国で評価を急ぐ」

―今後の地震研究の方向性は。

「日本の地震観測技術は世界でも一流で、このモニタリング結果を地震発生の中長期評価に取り込むための道筋をつけたい。今はまだ、過去の地震履歴から統計的に長期評価をしている。極端にいえば、体育の日は晴れが多いといった、昔の天気予報のようなものだ。統計的な手法は、時間推移で変化しないことには有効だが、地震はそうではない。一方で、(小原一成東大地震研所長が発見した)深部低周波微動など新たな知見も得られている。これらを防災に生かせる成果にしていくのが地震本部の役割だ」
(聞き手・曽谷絵里子)
東京大学地震研究所教授・平田直氏

日刊工業新聞2018年10月4日

COMMENT

全国地震動予測地図は、自治体の地域防災計画策定に役立てられた。だが、誤った捉え方から危険を低く見積もり、企業誘致などに使われた例もある。「これからは企業に対しても、しっかり理解されるよう伝えていきたい」と話す平田教授。科学的知見に基づいた事業継続計画(BCP)策定を求めている。(日刊工業新聞社・曽谷絵里子)

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