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関西圏の大学に見る地震・豪雨災害時の対応と課題

SNSの活用法がカギに
関西圏の大学に見る地震・豪雨災害時の対応と課題

大阪北部地震直後の大阪大学吹田キャンパスの一室(阪大提供)

 この2カ月あまりで起きた大阪北部地震、西日本豪雨の発生で、関西圏の大学はさまざまな影響を受けた。地震では建物の亀裂や棚が倒れるなどの被害が発生し、豪雨ではキャンパスの一部が避難勧告区域に入る大学もあった。加えて交通網混乱の影響から休講措置を取り、学生へ迅速な情報発信などの対応も迫られた。災害への各大学の対応と、今後に向けた課題を追った。

 6月の大阪北部地震は発生時刻が7時58分と講義が始まる少し前で、各大学はすでに出勤していた教職員が対応に当たった。多くの公共交通機関がストップし、それぞれ学生に対しホームページ(HP)などで休講の情報発信を行った。神戸大学や関西大学は緊急メールシステムを使って安否確認や情報発信を行い、大阪大学はポータルサイトを活用した。

 大阪北部のキャンパスで被害を受けた各大学は、学生の安全を確保した上で早期の授業再開を目指した。大阪府高槻市の2キャンパスで建物の被害が発生した関西大は専門業者に点検を依頼。吹田キャンパス(大阪府吹田市・茨木市)などで壁のひび割れなどが発生した阪大は、学内の建物診断士が迅速に確認を進めた。大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)のある立命館大学は、学生を構内立ち入り禁止にして校舎内の復旧に当たった。

 一方、7月の豪雨は休講規定に当たらず各大学は対応に苦慮した。関西大は「8時台に学長判断で休講を決定したが、台風時に比べると遅くなった」(学長課の玉村良史課長補佐)と振り返る。阪大も午後から休講にし、「学生から『遅い』との声はあったが、講義回数の確保を考えると安易な休講はできない」(安全衛生管理部の山本仁副部長)と判断の難しさを語る。豪雨により土砂崩れや浸水などの被害があった神戸大は今後、避難勧告などが発令された時の休講措置について、全学統一の扱いを検討する方針という。

 各大学は今回の災害を教訓に、学生らへの情報発信の改善を検討する。関西学院大学は情報発信の一元化とHP表記の改良を図る。同志社大学はHPに加え「会員制交流サイト(SNS)の活用法が課題」(広報課)とする。京都大学の山極寿一総長は、SNSは学生になじみがある利点を認めつつ「学生全員が利用しているわけではない」と指摘し、補完の一手段と認識。また地震などに不慣れな留学生をどうフォローするかも共通の課題だ。
(文・安藤光恵)
日刊工業新聞2018年8月6日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
関西圏の大学は今回の災害で甚大な被害には至らなかったものの、より多様な災害へ備える、柔軟な対策が改めて求められている。 (日刊工業新聞社大阪支社・安藤光恵)

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