20年前、章男社長は孫さんからのビジネス提案を断っていた
「MaaS」をめぐる合従連衡が二人を引き寄せる
シェアリングなど自動車を使ったサービスの新潮流「MaaS(マース)」をめぐる合従連衡が激しさを増してきた。3日、ホンダがライドシェア(相乗り)で米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を公表したのに続き、4日はトヨタ自動車がソフトバンクグループと共同出資会社の設立を発表した。MaaSが浸透すれば、サービス事業者に車を供給する下請けになりかねない―。危機感が自動車メーカーの背中を押す。
「今から20年ほど前―」。4日、トヨタ自動車社長の豊田章男氏は、ソフトバンクグループを率いる孫正義氏との共同会見に臨み、2人の出会いを振り返った。当時、孫氏からビジネス提案を受けたが断ったという。
だが「トヨタが『クルマをつくる会社』であった時には実現しなかった提携が、(移動サービスを提供する)『モビリティ・カンパニー』を目指そうと考えた20年後の今、必要不可欠なものになった」と力を込める。
また、ソフトバンクの強みを「未来のタネを見抜く先見性、『目利きの力』」にあるとする一方、トヨタの強みは「トヨタ生産方式(TPS)に基づく『現場の力』」と説明。その上で、「両社が描く『モビリティの未来』に期待してほしい」と要望した。
両社はMaaS分野で提携し、共同事業会社「モネテクノロジーズ」を設立する。20年以降、トヨタが開発する次世代電気自動車(EV)「eパレット」を使い、移動中に料理を作って宅配するサービス、移動中に診察する病院送迎サービス、移動型オフィスなどの展開を目指す。
一方、自動運転車を使ったライドシェアサービスでGMとの提携を決めたホンダ。GM子会社で自動運転部門を担うGMクルーズホールディングスに出資し、GMグループの自動運転事業にも資金を拠出する。サービスは北米市場で19年以降にスタートし、3社で世界展開することも視野に入れる。
「北米を中心にライドシェアサービスは拡大する。我々もそれに加わりたい」とホンダの倉石誠司副社長。無人ライドシェアという新たな移動サービスを間近に控え、その“バス”に飛び乗った。
MaaSは「モビリティー・アズ・ア・サービス(サービスとしてのモビリティー)」の頭文字をとったもの。ライドシェアやカーシェアリング、移動型店舗といったサービスが代表例だ。EV、コネクテッド、自動運転といった次世代技術を取り込みながら進化し、普及しつつある。
PwCコンサルティングはMaaS市場は30年までに米国、欧州、中国の3地域の合計で1兆5000億ドル(約171兆円)に達すると推定する。
車両より移動サービスそのものに付加価値がシフトするMaaS。この新潮流に乗るため、自動車メーカーは従来の製造・販売だけでなく、サービスでも稼ぐビジネスモデルへの転換を急ぐ。日系メーカーのほか、独フォルクスワーゲン(VW)がMaaSを展開する子会社MOIA(モイア)を通じライドシェアサービスの提供を今夏に始めた。米フォード・モーターは、21年までにハンドルやアクセルのない配車サービス向け自動運転車を量産する計画を掲げる。
ただスマートフォンを起点にどうサービスを設計するか、自動車メーカーは知見に乏しい。また開発費負担をどう軽減するかも課題だ。競争を勝ち抜くには、「変化を受け入れ、他社とオープンに連携していけるかがカギ」(中西孝樹ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト)だ。
このため、他社との提携戦略は全ての自動車メーカーにとって最重要の経営テーマ。ドライバーの安全確保や品質の高い車を安くつくる生産技術など自動車メーカーの強みと、IT企業のサービス開発やユーザーインターフェース設計に関するノウハウを融合させ、魅力的なMaaSを提供する必要がある。
「今から20年ほど前―」。4日、トヨタ自動車社長の豊田章男氏は、ソフトバンクグループを率いる孫正義氏との共同会見に臨み、2人の出会いを振り返った。当時、孫氏からビジネス提案を受けたが断ったという。
だが「トヨタが『クルマをつくる会社』であった時には実現しなかった提携が、(移動サービスを提供する)『モビリティ・カンパニー』を目指そうと考えた20年後の今、必要不可欠なものになった」と力を込める。
また、ソフトバンクの強みを「未来のタネを見抜く先見性、『目利きの力』」にあるとする一方、トヨタの強みは「トヨタ生産方式(TPS)に基づく『現場の力』」と説明。その上で、「両社が描く『モビリティの未来』に期待してほしい」と要望した。
両社はMaaS分野で提携し、共同事業会社「モネテクノロジーズ」を設立する。20年以降、トヨタが開発する次世代電気自動車(EV)「eパレット」を使い、移動中に料理を作って宅配するサービス、移動中に診察する病院送迎サービス、移動型オフィスなどの展開を目指す。
一方、自動運転車を使ったライドシェアサービスでGMとの提携を決めたホンダ。GM子会社で自動運転部門を担うGMクルーズホールディングスに出資し、GMグループの自動運転事業にも資金を拠出する。サービスは北米市場で19年以降にスタートし、3社で世界展開することも視野に入れる。
「北米を中心にライドシェアサービスは拡大する。我々もそれに加わりたい」とホンダの倉石誠司副社長。無人ライドシェアという新たな移動サービスを間近に控え、その“バス”に飛び乗った。
MaaSは「モビリティー・アズ・ア・サービス(サービスとしてのモビリティー)」の頭文字をとったもの。ライドシェアやカーシェアリング、移動型店舗といったサービスが代表例だ。EV、コネクテッド、自動運転といった次世代技術を取り込みながら進化し、普及しつつある。
PwCコンサルティングはMaaS市場は30年までに米国、欧州、中国の3地域の合計で1兆5000億ドル(約171兆円)に達すると推定する。
車両より移動サービスそのものに付加価値がシフトするMaaS。この新潮流に乗るため、自動車メーカーは従来の製造・販売だけでなく、サービスでも稼ぐビジネスモデルへの転換を急ぐ。日系メーカーのほか、独フォルクスワーゲン(VW)がMaaSを展開する子会社MOIA(モイア)を通じライドシェアサービスの提供を今夏に始めた。米フォード・モーターは、21年までにハンドルやアクセルのない配車サービス向け自動運転車を量産する計画を掲げる。
ただスマートフォンを起点にどうサービスを設計するか、自動車メーカーは知見に乏しい。また開発費負担をどう軽減するかも課題だ。競争を勝ち抜くには、「変化を受け入れ、他社とオープンに連携していけるかがカギ」(中西孝樹ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト)だ。
このため、他社との提携戦略は全ての自動車メーカーにとって最重要の経営テーマ。ドライバーの安全確保や品質の高い車を安くつくる生産技術など自動車メーカーの強みと、IT企業のサービス開発やユーザーインターフェース設計に関するノウハウを融合させ、魅力的なMaaSを提供する必要がある。
日刊工業新聞2018年10月5日の記事から抜粋