ウーバーが日本で布石を打つ“空のシェアリング”

IPOを見据えブランドや企業イメージの向上を狙う

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フジタクシーグループの梅村尚史社長(左)と、ウーバージャパンのトム・ホワイトゼネラルマネージャー
 米ウーバー・テクノロジーズが日本市場攻略の戦略を転換している。同社が手がける個人によるライドシェア(相乗り)サービスは、日本の法律では一般人が自家用車を使って有料送迎を行う「白タク」に当たり、認められていない。事実上、一度は締め出された日本市場だが、2018年からタクシー業界との協業や、操縦士なしで空を移動できる電動航空機「空飛ぶクルマ」のライドシェア構想を進め虎視眈々(たんたん)と事業拡大をもくろむ。

タクシー業界と協業拡大


 「名古屋市でタクシーの配車サービスに至ったことを光栄に思う」―。米ウーバーの日本法人、ウーバージャパン(東京都渋谷区)のトム・ホワイトモビリティ事業ゼネラルマネージャーは、9月に始めたフジタクシーグループとの配車サービスを感慨深げに語る。日本の都市で3番目の規模を誇る名古屋市内で、ウーバーに登録するフジタクシーの車両300台以上のタクシーを配車できるという。

 ウーバーはライドシェアで日本に参入して以降、白タク規制を巡ってタクシー業界から猛反発を受けた。そのため京都府京丹後市と北海道中頓別町、兵庫県淡路島内など高齢化で悩む地域の課題解決といった実験的なサービスが中心で、本格的なビジネスはあまり進まなかった。だが、配車サービスは業務のIT化や効率化を進めるタクシー業界にも相乗効果が見込める分野。ウーバーはアプリケーション(応用ソフト)の商圏拡大を狙っており、フジタクシーグループも同社のアプリなどの技術に魅力を感じ協業を決めた。ウーバーはこれを弾みにタクシー業界と協業を拡大していく。

日本で狙う空のライドシェア


 一方で、ウーバーは将来的に普及が期待される「空飛ぶクルマ」を利用した空のライドシェアでも攻勢を強める。8月末に空のライドシェアビジネスを紹介するイベントを日本で実施した。20年の飛行試験と23年の実用化へ、日本も試験などの候補地に含める。エリック・アリソンウーバー航空部門責任者は「候補地のいずれかで人々の移動を変革し、多様な移動手段が連携した交通を実現する」と自信を示す。

 ただ、空のライドシェアは、世界的にも法整備などが不十分だ。日本では関連する省庁や民間事業者の有識者で構成する「空の移動革命に向けた官民協議会」が発足。年内のロードマップ策定を目指すが課題は山積し、議論を深める必要がある。ただウーバーも官民協議会には加わっており、議論の段階から関わっていく意向だ。

監督官庁と協調を意識


 関係者によると「航空領域は監督官庁などから相当、厳しい反発があるだろう」との指摘がある。だからこそ、ウーバーはライドシェアと同じ轍(てつ)を踏まぬよう、したたかに戦略を進める。反発が大きい業界や省庁と融和ムードを演出して、協調を意識し合うことで事業を広げる。米ウーバーは新規株式公開(IPO)を狙っているとみられ、規模の拡大やブランド、企業イメージの向上にも力を注ぐ。

日刊工業新聞2018年9月28日

COMMENT

 個人によるライドシェアは残念ながら、タクシー業界の反発などもあり世界的に勢いが失速している。運転手とユーザーのトラブルも絶えないため、市場拡大も緩やかになるかもしれない。そうした中、ウーバーは他の事業を注力する戦略を打ち出す。自転車のシェアや空飛ぶタクシーなどを掲げ、移動に関するシェアリングをけん引する存在であることは変わらない。特に日本市場で期待するのが空のシェアリングだ。人口密度の高さや高層ビルの多さ、地上の交通網の飽和などを勘案すれば、参入する意味は十分ある。エリック・アリソン航空部門責任者は「人々の移動を、これまでの移動方法に“空”を加えることで重力に縛られない3次元的なものに変えたい」と意気込んでいる。サービスとしての普及はおそらくまだまだ先になるかもしれないが、今のうちから市場の土壌を作っていくことがシェアのリーディングカンパニーが担う役割だろう。

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