米国から見えてきた工作機械「新時代」
ITとの垣根低く、大きな連合が目の前に
金属加工が新たな時代の幕開けを迎えた。人手を省いて精度良く、速く、少量を多品種に作るという工作機械独自の進化と並行し、IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)に代表されるITとの融合が急速に進み、化学反応が起ころうとしている。長く同じ顔ぶれの工作機械産業に、IT関連の世界大手やスタートアップ企業などが多く見られるようになった。貿易摩擦の舞台でもある米国は、「NewEra(新時代)」の最前線といった様相で、変化にあふれている。
機械に話しかける。牧野フライス製作所の技術者が文字通り、工作機械に話しかけると、機械が作動した。米国のスタートアップ企業が開発した装置「ATHENA」を搭載し、口頭で機械を操作できる。まだ使える範囲は限られるようだが、ATHENAを使えば、作業者は工作機械を制御するプログラムのコードを用いずに、言葉でこと足りる。人手不足の現場で非熟練者が機械を使うことや、熟練者でも手がふさがった状況で仕事をする場面など、多様な恩恵がありそうだ。
ATHENAは牧野フライス専用の装置ではない。9月中旬に米シカゴで開かれた「国際製造技術展(IMTS)2018」では牧野フライスのほか、DMG森精機、OKKなどの工作機械にも採用された。
「米アマゾンのAIスピーカーってどうなの?」―。2017年10月に開かれたエレクトロニクス展示会「CEATEC(シーテック)ジャパン2017」の会場で、ジェイテクトの井坂雅一副社長(当時)は、操作装置としてAIスピーカーの可能性に思いを巡らせていた。すでに部分的ではあるが、ほぼ現実になった。
金属加工は力を加えて変形させて形を作る工法や、日本の工作機械の定義である、材料を除去して形にする工法がある。金属材料を積み上げていく積層造形(AM)は新分野。ここには新顔がそろい、勢いもある。
最も新しく、巨大なのは米HPだ。17年に樹脂の3Dプリンターを投入したのに続き、9月10日には同社初の金属3Dプリンターを発売し、金属AM分野に参入した。2Dプリンターのノズル技術を応用するなどで従来方式比で50倍もの高生産性をうたう。
金属粉に結合剤をかけて固め、後で同剤を蒸発させるなどの独自の工法を編み出した。前工程の造形はプリンター、後工程の仕上げは他社の工作機械とすみわけ、新しい金属加工を普及させる。
IMTSには米マイクロソフトなどの姿もあった。山崎智久ヤマザキマザック社長は「工場をスマート化するにはITに加え、我々のOT(オペレーション・テクノロジー)の両方が必要」と互いの強みを持ち寄った連携が要だと訴える。関係者によると、シリコンバレー系のスタートアップ企業による工作機械メーカーへの売り込みも盛んだったという。
IoTが製造業に欠かせないインフラになれば、工作機械や周辺装置、生産ラインをつかさどるソフトウエアの重要度が飛躍的に高まる。機械を販売した後のアフターサービスの重みも増す。
DMG森精機は米国でソフトを中心にしたサービス会社「STS」を立ち上げた。顧客が更新された最新版のソフトを使い、常に最適な生産ができるように働きかける。
一般的に、これまで工作機械のサービスは、機械本体や加工のサポートが中心であり、メーカーの担当者であってもソフトの優先度は低かった。新時代を見据えれば、ソフトの位置付けを高めるように見方を変える必要がある。
STSはグループ内での従業員教育などを通じ、ソフトの重要性を再認識させる活動も行う。最新版ソフトの無償提供を含む保守サービスプログラム「セロスクラブ」の普及につなげる考えだ。
ジェイテクトは工作機械など生産設備全般の補給部品のインターネット販売に注力している。日本勢はサービス力に定評があり、顧客の利便性を高める同サービスを追加し、「中国・韓国勢との差別化ポイント」(貝嶋博幸専務)を増やす。
工作機械、ITといった業種の垣根はすでに低く、これを乗り越えた大きな連合が目の前にある。
機械に話しかける。牧野フライス製作所の技術者が文字通り、工作機械に話しかけると、機械が作動した。米国のスタートアップ企業が開発した装置「ATHENA」を搭載し、口頭で機械を操作できる。まだ使える範囲は限られるようだが、ATHENAを使えば、作業者は工作機械を制御するプログラムのコードを用いずに、言葉でこと足りる。人手不足の現場で非熟練者が機械を使うことや、熟練者でも手がふさがった状況で仕事をする場面など、多様な恩恵がありそうだ。
ATHENAは牧野フライス専用の装置ではない。9月中旬に米シカゴで開かれた「国際製造技術展(IMTS)2018」では牧野フライスのほか、DMG森精機、OKKなどの工作機械にも採用された。
「米アマゾンのAIスピーカーってどうなの?」―。2017年10月に開かれたエレクトロニクス展示会「CEATEC(シーテック)ジャパン2017」の会場で、ジェイテクトの井坂雅一副社長(当時)は、操作装置としてAIスピーカーの可能性に思いを巡らせていた。すでに部分的ではあるが、ほぼ現実になった。
金属加工は力を加えて変形させて形を作る工法や、日本の工作機械の定義である、材料を除去して形にする工法がある。金属材料を積み上げていく積層造形(AM)は新分野。ここには新顔がそろい、勢いもある。
最も新しく、巨大なのは米HPだ。17年に樹脂の3Dプリンターを投入したのに続き、9月10日には同社初の金属3Dプリンターを発売し、金属AM分野に参入した。2Dプリンターのノズル技術を応用するなどで従来方式比で50倍もの高生産性をうたう。
金属粉に結合剤をかけて固め、後で同剤を蒸発させるなどの独自の工法を編み出した。前工程の造形はプリンター、後工程の仕上げは他社の工作機械とすみわけ、新しい金属加工を普及させる。
IMTSには米マイクロソフトなどの姿もあった。山崎智久ヤマザキマザック社長は「工場をスマート化するにはITに加え、我々のOT(オペレーション・テクノロジー)の両方が必要」と互いの強みを持ち寄った連携が要だと訴える。関係者によると、シリコンバレー系のスタートアップ企業による工作機械メーカーへの売り込みも盛んだったという。
IoTが製造業に欠かせないインフラになれば、工作機械や周辺装置、生産ラインをつかさどるソフトウエアの重要度が飛躍的に高まる。機械を販売した後のアフターサービスの重みも増す。
DMG森精機は米国でソフトを中心にしたサービス会社「STS」を立ち上げた。顧客が更新された最新版のソフトを使い、常に最適な生産ができるように働きかける。
一般的に、これまで工作機械のサービスは、機械本体や加工のサポートが中心であり、メーカーの担当者であってもソフトの優先度は低かった。新時代を見据えれば、ソフトの位置付けを高めるように見方を変える必要がある。
STSはグループ内での従業員教育などを通じ、ソフトの重要性を再認識させる活動も行う。最新版ソフトの無償提供を含む保守サービスプログラム「セロスクラブ」の普及につなげる考えだ。
ジェイテクトは工作機械など生産設備全般の補給部品のインターネット販売に注力している。日本勢はサービス力に定評があり、顧客の利便性を高める同サービスを追加し、「中国・韓国勢との差別化ポイント」(貝嶋博幸専務)を増やす。
工作機械、ITといった業種の垣根はすでに低く、これを乗り越えた大きな連合が目の前にある。
日刊工業新聞2018年9月24日/28日