工作機械「納期1年」も。背景に深刻な部品不足あり

想定を上回る需要急増、シリコンサイクルに変化

日本精工が増産するボールネジ
 工作機械や半導体製造装置などの生産設備の需要が空前の活況にある。日本工作機械工業会によると2017年の工作機械の受注額は過去最高を更新する見通しだ。想定を上回る需要の急増は、精密な位置決めに使われる直動案内機器など要素部品の調達が追いつかず、一部では「部品が手に入らず、工作機械の納期が1年と言われた」(業界関係者)との声も聞かれる。工作機械と部品メーカー双方の対応を追った。

 「全体的に直動案内機器の需給が逼迫(ひっぱく)しており、納期が1年を超える製品もある」。直動案内機器を手がける日本トムソンの担当者は現状をこう説明する。直動案内機器と同様に精密な位置決めに使われるボールネジも引き合いが多い。

 日本精工では定期供給するボールネジは、追加発注分を含めて通常の1―2カ月の納期で対応する一方、「新たに設計が必要な製品は納期が6カ月―1年未満に伸びる」(内山俊弘日本精工社長)という。

要素部品、一斉に増産へ動く


 需要急増の背景には複合的な要因がある。例えば、16年秋頃に従来の“シリコンサイクル”では下降局面に向かうはずの半導体製造装置向けの需要が増加。17年3月以降にスマートフォンのモデルチェンジに伴う設備需要が急回復した。

 17年5月以降は自動車関連とみられる設備投資が活発化し、日本精工の内山社長は「特に工作機械向けの需要が月を追うごとに強くなっていき、急きょ増産体制を構築した」と振り返る。

 切迫する需要に対応するため部品各社は人員の拡充や操業時間の延長などにより供給体制を強化。日本精工はボールネジや直動案内機器などの精機製品の生産量を17年度に前年度比約4割増やした。

 THKは17年7月までに直動案内機器などの生産量を16年秋と比べ約5割増加。日本トムソンは直動案内機器の17年度下期(17年10月―18年3月)の生産量を金額ベースで17年度上期比2割以上引き上げる。

 各社は設備投資も積極化する。日本精工は日本と中国で数十億円を投じてボールネジなどの精機製品の設備を増強。両拠点で生産能力を現状比約1割増やし、18年12月のフル稼働を予定する。また韓国では直動案内機器、日本では工作機械の主軸向けの精密軸受なども増産する。

 THKは17―18年の2年間に500億円を投じて直動案内機器などの生産を拡大。日本とベトナムで新工場を建設し、中国では能力増強を前倒しする。中国では早ければ17年内に直動案内機器の増産を予定する。

 各社はさらなる納期短縮にも取り組む。日本精工は一連の設備投資で、切削と研削工程を一体化するなど生産を合理化し、納期の短縮を図る。

 THKはロボットの活用などで自動化を進め、24時間稼働できる体制を構築して生産を効率化する。日本トムソンは位置決めなどで使われる同社のアクチュエーター製品群から、顧客が最適な商品を選定するための情報提供サイトを11月に立ち上げた。

 同サイトは製品の寿命予測が可能で顧客の早めの調達を支援したり、特注品より納期が短いセミオーダー品の活用の検討を促すなどの効果が期待できるという。

 部品各社は能力増強などにより“納期問題”の解消に奮闘する。ただ旺盛な需要は今後も続く見通しで、日本精工の内山社長は「18年9月以降に設備能力が上がり、納期をもう少し短くできると思う」との見通しを示す。これまで幾度となく景気の山谷を経験してきた機械業界の知見が求められる場面が続きそうだ。

ウルトラCなく、打開へ奔走


 「ウルトラCなんてない」―。工作機械中堅の西島(愛知県豊橋市)の西島豊社長はそう声を絞り出す。リニアガイドなど工作機械に必要な要素部品の調達に苦慮している。

 同社は自動車部品を加工する専用機が主力製品だ。受注生産で顧客ごとに仕様が異なり部品も特殊。標準部品をまとめて発注する量産系の大手各社に比べて影響が大きい。

 「お客さまに迷惑をかけられない」(西島社長)と、受注を先読みした先行発注で地道に部品を確保し、納期を堅持している。
                

 工作機械業界は記録的な活況だ。今年の受注額は過去最高がほぼ間違いない。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた最新データは1―11月が1兆4796億円。07年の1兆5899億円を超えれば10年ぶり過去最高を塗り替える。初めての1兆6000億円台も見えてきた。

 単月1000億円のラインが好不調の目安とされる中、月平均1345億円の進捗(しんちょく)は異常とも言える高水準だ。11月には外需だけで1000億円を超えた。現在の活況について、「来年、大きく伸びることはなくても、維持はしそう」(三上高弘東芝機械社長)と息の長いものになるとの見方が多い。

 前例のない旺盛な設備需要は要素部品の不足を生んだ。工作機械各社は現状を打開すべく奔走する。ただ、まさにウルトラCはなく、「発注の内示を早め早めにしっかり出す」(安形哲夫ジェイテクト社長)、「リスクを抱えて早く発注する」(三上東芝機械社長)、「先行発注で生産枠を確保する」(DMG森精機)と、早期の発注が基本だ。

 その上で、生産工程を前後させる取り組みも目立つ。オークマは通常、全部品をそろえ組み立てている。これを、そろった部品を使う箇所を先に組み立てるように変えた。さらに東芝機械などで他社製品に置き換える転注の動きもある。

 一方、要素部品以外にも調達に時間を要するものがある。DMG森精機は中小協力会社からの部品の品質と納期を確保するため、加工機の貸し出しに加え、生産技術部・製造部の社員が出向して支援する体制を整えた。さらに18年1月4―5日を働き方改革の一環で休業日とし、生産が滞っている協力会社に「この期間を利用してキャッチアップしてもらう」(DMG森精機)考えだ。
DMG森精機の伊賀事業所

(西沢亮、六笠友和)

日刊工業新聞2017年12月27日

COMMENT

六笠友和
編集局第一産業部
編集委員

好況時に要素部品が不足するのは「この10年、20年のことではない」(業界関係者)。古くからある現象だ。直近では工作機械受注が過去最高を記録した、07年が記憶に新しい。当時は軸受不足となり、日本精工、NTN、ジェイテクトなどが設備投資に動いた。しかし、翌年にはリーマン・ショックが起きた苦い経験がある。設備投資後の需要の急減もまた繰り返されてきた歴史であり、構造上の大きな課題だ。

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