NAFTA暫定合意、日系車に北米戦略の転換迫る号砲に

連載「視界不良 米自動車市場」(1)より

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米国ホンダホームページより
 米国の自動車市場が視界不良に陥っている。米トランプ政権が北米自由貿易協定(NAFTA)や輸入車関税などに関する通商政策で米国第一主義を鮮明にし、自動車メーカーは米国を中心とする北米事業戦略の再考を迫られる。市場では新車販売の縮小、需要の大型車シフトといった変化が進む。それでも日系自動車メーカーにとって世界2位の自動車市場である米国の重要さは変わらない。米国で適切にかじをとれるか―。

日系車、サプライチェーンに動揺


 「日本などNAFTA以外の国・地域でしか調達できない原材料もある。影響は少なくない」―。日本の1次自動車部品メーカー首脳は表情を曇らせる。8月末、米国とメキシコがNAFTA再交渉で暫定合意したことを受け、日本の自動車関連メーカーに動揺が広がった。

 再交渉に臨んだトランプ政権の狙いは、端的に言えば米国での生産を増やすこと。そして暫定合意の内容はトランプ政権の完全勝利だ。中でも最大の“戦利品”は「自動車・部品の原産地規則を厳格化したこと」とみずほ総合研究所の小野亮主席エコノミストは解説する。

 これまで関税ゼロとなる条件として、原産地規則では同地域内での部材調達比率(域内原産割合)は62・5%以上だった。これが75%以上となる。関連して一部部品は、NAFTA域外で調達した原材料でも同域内で大幅な加工を施せば原産品と認める「関税分類変更(CTC)基準」が廃止される。また新たに時給16ドル以上の地域で製造された部材を40%以上(トラックは45%以上)使用することを定めた「賃金条項」が設定される。

戦略の前提が変わった


 日本の3倍を超える1700万台規模の自動車市場の米国。大きな需要に応えるため、自動車メーカーはカナダ、メキシコを米国向け輸出拠点として活用してきた。

 特に賃金水準が低く生産コストが安いメキシコはその色合いが濃い。日系メーカーではトヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダが完成車工場を構える。2017年は約130万台を生産し約70万台を米国に輸出した。当然、日系部品メーカーの拠点も多い。

 倉石誠司ホンダ副社長はメキシコ拠点の活用も関連して「NAFTAという枠組みを前提に北米地域で事業展開してきた」と話す。だが再交渉の暫定合意で、その前提が大きく変わる。

 トランプ大統領にとって米国の貿易赤字は絶対悪であり、その4分の1を占める自動車分野に矛先を向けてきた。そんな中、メキシコとのNAFTA再交渉で、自動車メーカーの米国生産を促す暫定合意を勝ち取ったことの意味は大きい。今後、自動車分野を狙い打ちにした通商政策の実現に向け、トランプ政権の動きが勢いを増すのは必至。日系自動車メーカーに北米戦略の本格転換を迫る号砲が鳴った。

 


日刊工業新聞 2018年9月24日

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梶原洵子
編集局第二産業部
記者

日刊工業新聞・自動車面で連載「視界不良 米自動車市場」が24日から始まりました。第1回を掲載します。第2回は本日付の紙面に掲載されています。

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