「中華まん」失速にみるコンビニの危機

セブンのコピーにはならない!脱同質化へ「定番」再強化

 コンビニエンスストアにとって、個性がある“尖った”商品や店舗の開発は欠かせない。だがそれ以上に重要なのが、全国展開している「定番」の強化だ。

 「(井村屋に)ものすごく投資してもらい、おいしい商品ができた」。ファミリーマートの沢田貴司社長は8月下旬に発売した中華まんに関してこう語る。中華まんは秋冬商品の定番だが、2015年度までは売上高が毎年約1―7%ずつ落ち込み、マンネリ化が課題となっていた。

 ファミマは17年、中華まんの“史上最大の刷新”を実施し、生地の発酵回数などを見直した。サプライヤーである井村屋は20億円を投じて工場を増設。17年度のファミマの中華まんの売り上げは前期比18%伸びた。

 コンビニとの取引はメーカーにとっても魅力だ。中華まんでは販売額の7割近くをコンビニが占めるとされる。井村屋は18年度も生産ラインに6億円を投資した。

 8月下旬、ファミリーマートの親会社であるユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は伊藤忠商事の子会社となった。三菱商事も17年、ローソンを子会社化した。ファミマ、ローソンとも、商品開発や新規事業の要職には、商社出身者が目立つ。「親子ではなく(対等な)夫婦関係。『かかあ天下』になるかもしれない」。子会社化について、自らも伊藤忠出身のユニー・ファミマHDの高柳浩二社長はこう表現する。

 ただ、「『全部自分たちで考え、自分たちでやる』のがモットー」(鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問)のセブン―イレブンの背中は遠い。

 首都圏や中京圏などでコンビニ「コミュニティ・ストア」を展開する国分グローサーズチェーンの横山敏貴社長は「三大チェーンのやり方が正解なのか」と問題提起する。背景にあるのは同質化への危機感だ。

 高柳ユニー・ファミマHD社長もセブン―イレブンについて「ベンチマークとしては使わせてもらうが、コピーにはならない」と強調する。

 ドラッグストアやネットなどとの競争で、事業環境は厳しい。一方で、この夏の豪雨や台風、地震などの自然災害では、コンビニの機動力があらためて注目を集めた。地域に密着した魅力的な小売店舗として、存在感を発揮するための取り組みは続く。

日刊工業新聞2018年9月21日

江上 佑美子

江上 佑美子
09月23日
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コンビニエンスストア業界は合併などを経て、全国約5万5000店舗のうち9割超がセブン―イレブン、ファミリーマート、ローソンの3チェーンとなっている。中でも2万店超を有するセブン―イレブンは、1店舗当たりの1日の売上高で他社に10万円以上の差をつけるなど、独り勝ちの状態。この状況にライバルは尖(とが)った商品や店舗づくりで脱同質化を図り、セブンの独走を阻もうとしている。個性でセブンの勢いを止めることは出来るか。

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