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ホンダ開発者の本音、「クラリティPHEV」で最もこだわったこと

本田技術研究所 四輪R&Dセンター主任研究員 清水潔氏
ホンダ開発者の本音、「クラリティPHEV」で最もこだわったこと

EVの走行距離はPHVトップレベルの性能

 クラリティシリーズは、共通のデザインやプラットフォームを用いた燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の「スリーインワンコンセプト」を掲げて開発してきた。PHVはボリュームリーダーの一つに位置付けている。

 クラリティPHEVが目指したのは、上級ラグジュアリー志向と環境志向を高い次元でバランスさせ、何かを我慢することのない中型の環境車だ。最もこだわったEVの走行距離は114・6キロメートル(JC08モード)で、PHVトップレベルの性能を達成した。WLTCモードでも101キロメートルであり、日常シーンのほとんどをEVとして使える車となっている。長いEV走行距離と高い燃費性能を合わせて、燃料タンクは26リットルと軽自動車並みのサイズでありながら、800キロメートル以上の走行も可能だ。

 クラリティPHEVに搭載しているスポーツハイブリッドi―MMDプラグインシステムは、直列4気筒1・5リットルアトキンソンサイクルエンジンと2モーターハイブリッドシステムをホンダとして初めて組み合わせた。駆動モーターの最高出力は135キロワット、最大トルクは315ニュートンメートルで、従来モデルの「アコードプラグインハイブリッド」に比べパワフルかつ静かな加速を実現した。総電力量は17キロワット時。アコードプラグインハイブリッドと比べてEV走行で使用する容量は4倍、出力を1・4倍に高めた。

 また、「EVドライブ」「ハイブリッドドライブ」「エンジンドライブ」の三つのドライブモードで運転状況に応じて最適な効率で対応する。一般的なPHEVの使い方のイメージは普段は家庭で充電してもらい、充電した電力で走るEV。ただ週末に遠出し、充電を使った際にも安心して長距離のドライブを楽しんでもらえるよう、エンジンによるハイブリッド走行もできる。そこで、クラリティPHEVは、なるべく電気を使って走ってもらいたいと最大限にEV性能を高めた。

 電動車ならではの静粛性も追求した。吸音材や遮音材を効果的に配置し、フロントウインドーとフロントドアには遮音機能付きガラスを採用することで、乗車した瞬間から分かる上質な静粛性も実現している。

◇クラリティPHEV
全長×全幅×全高=4915×1875×1480mm
車両重量=1850キロg
乗車定員=5人
エンジン=1.5lアトキンソンサイクルDOHC i‐VTEC+i‐MMDプラグイン
総排気量=1496cc
最高出力=184馬力(モーター)
変速機=電気式無段変速機
JC08モード燃費=1l当たり28.0km(ハイブリッド)
価格=588万600円(消費税込み)
日刊工業新聞2018年9月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ホンダは2030年までに世界販売の3分の2を電動車にする目標を打ち出している。クラリティPHEVはホンダの新たな電動化計画の試金石になる車種でもある。クラリティPHEVに試乗したが、内外装の高級感や走行中の静かさはもちろん、急な方向転換をした際に鋭角のカーブでも対応する操作性も備わっていた。電動車としての高い性能だけでなく、アピールできるさまざまな特徴もある。(山岸渉)

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