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日米欧の“遊園地”攻略、世界トップに躍り出た日本企業

三精テクノロジーズ、買収2社とシナジー「最適」提案
日米欧の“遊園地”攻略、世界トップに躍り出た日本企業

ベコマの買収で中国にも生産拠点を得た(ベコマの遊戯機械)

 三精テクノロジーズは、ジェットコースターといった遊戯機械などを手がける。3月にオランダの遊戯機械メーカーのVEKOMA(ベコマ)を買収。12年に買収した米国のS&S WORLDWIDE(S&S)を合わせた3社のグループ力で商圏を拡大する。日本、米国だけでなく、ベコマがある欧州、さらには経済成長が進む中国や他のアジア圏での遊戯機械需要も取り込んでいく。(大阪・友広志保)

 三精テクノロジーズは舞台設備、昇降機、保守メンテナンスも手がける。遊戯機械事業の売上高は、ベコマ買収で世界トップに躍り出た。三精テクノロジーズの遊戯機械の拠点は日米欧の3極となり、M&A(合併・買収)のシナジー効果発揮が期待される。

 三精テクノロジーズの良知昇社長は「経済成長が進み、国民が裕福になると、消費がモノからコトへ移り、遊園地などにもお金を使うようになる」と話す。例えば、同社は中国で今後10年の間に20―30のテーマパークができるとみている。

 同社は中国に生産拠点を持っていなかったが、ベコマの主要協力会社の工場が中国にあり、販売先の近くで自社グループの製品を生産できるようになった。定期的に入れ替える部品などが近くから供給できるのも、遊園地などの顧客にとって安心材料となる。

 アジアの市場は、欧米の大手遊戯機械メーカーによる「取り合い状態」(良知社長)にある。欧米企業やその業界団体などが、自国の工業規格や安全基準をアジアの国々で適用させ、製品を売りやすくしようと動いている。

 同社もベコマ買収以前は、欧州の基準を採用している国での製品販売で、設計変更などが必要だった。そのため価格が高くなり、入札に勝てないことがあったという。しかし、S&Sに加え、ベコマを傘下にいれたことで、米国と欧州双方の基準に柔軟に対応できる。今後、アジアの国々がどちらの基準を採用しても対応でき、有望市場を取り込みやすくなった。

 また3社間では「得意な製品群に重複がない」(同)。三精テクノロジーズは乗り物に乗って設置された人形など、景色を楽しむような機械が得意。S&Sは絶叫系のローラーコースターが主力。ベコマは身長が120センチメートル以上の子どもなら誰でも乗れるようなファミリータイプのローラーコースターが得意だ。

 三精テクノロジーズが得意とする遊戯機械に加え、市場が大きいローラーコースターをS&Sとベコマがカバーする。グループ全体で遊戯機械の主要な市場をほぼカバーしている。顧客の要望に対し、3社の製品の中から最適なものを選び、最も競争力のある価格、短納期など多様な選択肢を提示できる。

3社間では得意な製品群に重複がない。S&Sは絶叫系の遊戯機械が主力

(文=友広志保)

日刊工業新聞2018年9月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
良知社長は、国や地域の安全基準対応なども含めて提案できるため「他社にないグループ力で競争が優位になる」とする。 (日刊工業新聞社大阪支局・友広志保)

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