薬価改定のあおりで国内市場縮小、再生医療分野の開発急ぐ大日本住友製薬

野村博大社長インタビュー

 大日本住友製薬は国内事業のテコ入れに力を入れている。2023年度をめどに現状比約600億円増の2000億円の国内売上高を目指す方針を打ち出した。国内は薬価改定のあおりで縮小傾向にあり、同社売上高も10年度をピークに落ち込んでいるが、重点投資地域として位置付け、挽回を図る。野村博社長に展望を聞いた。

 ―直近の中期経営計画の発表を見送りましたが、今後の事業戦略の中核とする部分は。
 「成長のドライバーはがん領域と再生医療になる。開発中の抗がん剤『ナパブカシン』は胃がんの盲検に失敗したが、将来、非定型抗精神病薬『ラツーダ』の後継になるはず。また再生細胞医療では慢性期脳梗塞、加齢黄斑変性関連、パーキンソン病関連の開発を急いでいる。さらに、医薬品事業以外を手がけるフロンティア領域について、社内でアイデア出しをしている」

 ―再生医療が注目株です。
 「慢性期脳梗塞治療薬『SB623』は、22年度に米国での発売を目指す。高橋淳京都大学教授らが手がけているパーキンソン病領域については8月、医師主導治験が始まった。加齢黄斑変性については治験に向けて、ヘリオス(東京都港区)と準備を進めている。再生細胞医薬分野で進める五つのプロジェクト以外にも、外部の参画を含め、案件を積極的に取り入れたい」

 ―デジタル技術についての考え方は。
 「人工知能(AI)の活用は、研究部門ですでにシミュレーションなどの計算技術に基づく『インシリコ創薬』や医療従事者向けウェブサイトのアクセス解析で活用している。今後は全社的に横串を通すようにする。新分野領域としてAIなどのデジタル技術とヘルスケアを掛け合わせたい。4月からデジタル革新を全社推進する責任者を置いた」

 ―4月に社長に就任しました。力を入れたいことは。
 「従業員が毎日生き生きと仕事ができ、株主も当社の株式を保有していてよかったと思えるような会社にしたい。また、これまで効率を考え重点投資は北米に偏ってしまったことで、国内事業が右肩下がりになってしまった。改めて日本の事業を再成長路線に乗せていく」
(聞き手・石宮由紀子)

日刊工業新聞2018年9月6日

日刊工業新聞 記者

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09月09日
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薬価改定などの影響を受けて、低迷する国内事業の巻き返しを図る。同業他社が国内より海外売上高の比率を高める方針を打ち出す中、異例の戦略といえる。この目標を達成するため、新製品の投入や横断組織の活用、AIによる業務効率化など、あらゆる戦略をとっていく方針だ。野村社長のかじ取りが注目される。(日刊工業新聞社大阪支社・石宮由紀子) 

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