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武田薬品、ウェバー社長「和光は我々のコア戦力ではなかった」

クリストフ・ウェバー社長インタビュー。研究部隊を日米に集中
武田薬品、ウェバー社長「和光は我々のコア戦力ではなかった」

ウェバー社長

 武田薬品工業は約54億ドル(約6100億円)を投じて米創薬ベンチャーのアリアド・ファーマシューティカルズ(マサチューセッツ州)を買収した。固形がん分野の開発品や研究者を確保する狙い。一方、子会社の和光純薬を売却、「選択と集中」を徹底して創薬研究や新薬開発に経営資源を集中する。長期的な成長へ向け、どのような“処方箋”が必要なのか。クリストフ・ウェバー社長に戦略や展望を聞いた。

 ―がん領域の強化に向け、約6100億円を投じて米アリアド・ファーマシューティカルズ(マサチューセッツ州)を買収する方針を決定しました。
 「重点疾患領域においては常にパートナーシップの可能性を模索している。アリアドのことは昔から知っていて、彼らと他の案件で対話をしているうちに話が広がった。創薬に成功している素晴らしい組織であり、カギとなる人材は維持したい。彼らも、当社のがん領域研究部隊もボストンが拠点であり、統合作業はやりやすい」

 ―試薬を手がける子会社の和光純薬工業(大阪市中央区)を富士フイルムへ売却することも決めましたね。
 「和光は我々のコア戦力ではなかった。戦略的な事業でなければ技術への十分な投資ができず、力を弱めてしまうことになる。このため、もっと彼らの将来に投資してくれる会社への売却を決めた」

 ―研究開発体制の再編が進行中です。
 「非常に重要な変革だ。三つの治療領域に焦点を当て、研究(部隊)を日米に集中させる。(再編の)費用は750億円で変わらないが、前倒しで使っていく。2016年度は当初250億円を使う予定だったが、変革が急速に進んでいるので470億円とする」

 ―日本では毎年薬価改定が行われることが決まりました。
 「薬価の改定は新製品よりも(特許が切れた先発品の)長期収載品に対して行われるべきだ。日本がイノベーションに対価を払うならば我々も科学や研究開発へ投資し、革新的な製品をもたらす」

 ―今後のM&Aの方針は。
 「アリアド買収後も(財務上の)柔軟性はある。だが良い機会は非常にまれで、価格をはじめとする非常に多くの要素をクリアしなければならない。M&Aが絶対必要だとは考えていない。研究開発でパートナーシップをつくる際は買収よりも、協業をする頻度が高まるだろう」

 ―トランプ米大統領の発言の影響は。
 「まず、何が現実になるかを見極めたい。ヘルスケアのシステムは非常に複雑。変化が出てきてから、それに基づいた検討をしたい」
日刊工業新聞2017年2月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
重点疾患領域への集中や非中核事業の整理を強力に推進し、将来の飛躍に向けた道筋をつけた。ただ、実際に研究開発の生産性が上がるかは現時点では評価が難しい面もある。変革の進展を検証する指標をきめ細かく設け、状況に応じて素早く軌道修正を図ることが必要だ。スピード感に定評のあるウェバー社長だが、真価はこれから問われる。 (日刊工業新聞第ニ産業部・斎藤弘和)

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