M&Aの可能性も…苦しい医薬品卸、変革を急ぐ

収益多様化や物流効率向上

 医薬品卸が変革を急いでいる。主要4社の2019年3月期連結決算は、3社が営業減益となる見通し。各社の主力とする医療用医薬品卸売事業の収益性が、薬価改定や後発薬の普及などで圧迫されることが要因だ。対策として各社は収益源の多様化を進めてきており、将来のM&A(合併・買収)の可能性を予感させる業務提携案件も出ている。合従連衡へ踏み切るか否かにかかわらず、供給網の強化には継続して取り組む必要があり、幅広い視点での対応が試される。

 「将来の経営統合を選択肢に入れているのではないか」(大手製薬首脳)。医薬品卸国内3位のスズケンと同4位である東邦ホールディングス(HD)の動きが、業界で注目を集めている。

 卸の両社は18年7月、東邦HDが開発・提供してきた「顧客支援システム」の共同利用に関する基本合意書を締結した。医療機関向けの在庫管理や受発注といった仕組みを両社で使う。協業はスズケンが東邦HDに申し出た。スズケンによると、自社が持つ医療機関向け在庫管理システムの保守期限切れが近づき、代替手段を探していたという。

 両社は提携の詳細やスケジュールについては、今後の協議事項だとして明らかにしていない。一方で両社は、それぞれ相手方の連結子会社への出資も検討する考えで、踏み込んだ決定がなされる可能性もありそうだ。

 「最近の卸は、いろいろやっている。(スズケンと東邦HDの提携は)その流れに沿った取り組みだ」(中堅製薬幹部)との分析もある。国内卸各社は主力とする医療用医薬品卸売事業において、例年、医療機関や調剤薬局などとの厳しい納入価格交渉を余儀なくされる。昨今は薬価制度抜本改革や後発薬の普及といった要因も収益性を圧迫している。

 そこで各社は多角化を急ぐ。最大手のメディパルHDは営業部隊に医薬情報担当者(MR)資格の取得を奨励し、製薬企業から医薬品の使用成績調査を受託するなどの新規事業が伸びてきた。「(医療用の)物販は(薬価改定などで)メーカーが苦しくなると、卸のマージンが下がる。それを防ぐために新規事業を進めてきている」(渡辺秀一社長)。

 2位のアルフレッサHDは、「(一般薬やサプリメントなどを扱う)セルフメディケーション卸売事業と、医薬品等製造事業が成長領域」(久保泰三社長)。19年3月期の両事業は増収営業増益を確保する見通しだ。製造事業ではアルフレッサファーマ(大阪市中央区)が19年3月以降、特許の切れた先発薬である長期収載品41製品を第一三共から譲受し、品ぞろえの拡充につなげる。

 東邦HDは事業規模がメディパルHDをはじめとする他の大手卸より小さいため、差別化の武器として顧客支援システムを位置付けてきた。同システムの導入を通して医師や薬剤師との信頼関係を構築できれば、医薬品の販売もしやすくなる。音声認識で薬歴を作成できる仕組みや、医療材料の分割販売サービスを展開するなど、品ぞろえも多彩だ。スズケンは東邦HDと組むことで、こうした商材の開発費や運用費を抑制できるとみられる。

 ただ、会社同士の全面的な合併となると、その後の統合プロセスに多大な労力を要するのが常。スズケンと東邦HDがこれに踏み切るかは未知数だ。医薬品卸では08年10月、メディセオ・パルタックHD(現メディパルHD)とアルフレッサHDが合併に関する基本合意書を締結していた。しかし09年1月、公正取引委員会の審査が長引く見通しとなったことなどを理由に、両社が合併を白紙撤回した経緯もある。

 卸各社は合従連衡を決断しようがしまいが、患者の生命に関わる薬の物流を担う以上、供給網の高度化が欠かせない。メディパルHDは17年3月に稼働した新世代型物流センターの埼玉ALC(埼玉県三郷市)で、1時間当たりの出荷能力が旧世代型センター比約5倍に高まる見込み。「出庫スピードが向上しており、(約5倍という)当初の見通しに近づいている感触がある」(メディパルHD)。
 
 東邦HDは19年中に、東京都大田区で総合物流センターを稼働する計画。近隣の物流拠点を移転・集約し、首都圏の物流の合理化や再構築を図る。

 また、同センター内での業務効率向上も追求する。同社は18年11月に、中国地方の物流拠点としてTBC広島(広島市安佐南区)の稼働を見込む。ここではロボットを活用し、包装単位商品(ピース品)のピッキングの90%を自動化する方針。東京の総合物流センターでも、「広島で達成する性能をキープ」(森久保光男専務)したい考えだ。

 

日刊工業新聞2018年8月21日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
08月22日
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 物流面での地道な取り組みを続けつつ、新規事業を加速できるか。卸各社の覚悟と総合力が問われている。
(日刊工業新聞社・斎藤弘和)

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