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記録的猛暑なのにエアコン生産が意外と伸びない理由

昨年後半に急増した在庫が引き継がれていた
 酷暑の中で、エアコンを上手く利用されているだろうか。この暑さでは、エアコンの出荷が激増して、在庫が不足しているような状況が思い浮かぶが、実際はどうだろうか。

 意外にも、2018年6月のエアコンの生産指数は、前月比マイナス0.1%と微減となっている(前年同月比もマイナス2.1%と減少で昨年の生産水準よりも低い)。メーカーからの出荷指数は、前月比マイナス3.0%(前年同月比もマイナス0.5%)とこちらも減少している。

 今年は、3月に早くも桜が咲いてしまったり、5月の運動会で熱中症が心配されたりと、春先から高めの気温が続き、7月に入ってこの酷暑という天候の推移だった。にもかかわらず、少なくとも6月時点では、エアコンの国内生産やメーカーの出荷が激増している様子はなく、むしろ春先に比べると低下している。

 このような酷暑続きの天候にもかかわらず、メーカーがエアコンの生産を増加させていない理由は何だろうか。

 思い出してみると、昨年も今年と同じように、非常に暑い6月、7月となった。そのため、エアコンの販売が伸びたため、8月に一気に増産体制に入った。

 ところが、8月に入って天候が急変し、雨続きで、9月まで気温の低い状態が続いた。このため、8月以降、エアコンの出荷が伸びない状態になったものの、増産計画がそのまま実施されたことから、一気に在庫水準が上昇してしまった。

 今年前半までのエアコン在庫の前年同月比を要因分解してみると、生産・受入要因(作りすぎ等)や出荷要因(売れない)によって在庫が高くなっている訳ではないようだ。

 むしろ、月初在庫要因(前月からの在庫の引き継ぎ)による上昇が主たる要因であることがわかり、その起点は、昨年の11月だった。つまり、8月から10月のエアコンの増産の結果、11月に在庫水準が高くなり、その状態が今年前半まで「引き継がれた」状態にある。

 このことが、今年3月からの高い気温にもかかわらず、エアコンの生産が劇的には上昇していないことの背景にあるようだ。ただ、今年の3月にエアコンの出荷が大幅に伸びたことから、第2四半期に入り、エアコンの在庫水準は前年との比較でも落ち着きをみせている。
                 


神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
7月の記録的な猛暑は「残念ながら」8月に入っても過ぎ去る気配はなさそうだ。このため、今年第3四半期のエアコンの出荷や在庫の推移を注視していきたい。

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