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売上高1兆円増は実現するか、NTTデータが新体制で挑む海外戦略

M&A拡大へ
売上高1兆円増は実現するか、NTTデータが新体制で挑む海外戦略

デルのサービス部門を買収し北米でのブランド向上を目指す(NTTデータサービシーズ本社)

 NTTデータは6月に本間洋社長が就任し、新体制がスタートした。2018年は創立30周年であり、18年3月期には連結売上高が初めて2兆円を突破した。グループビジョンも刷新し、新たに「トラステッド・グローバル・イノベーション」と制定。今後10年後の目指す姿を掲げた。さらなる高みを目指すNTTデータが次に挑むのはグローバルトッププレーヤーだ。

 グローバルトッププレーヤーの目標達成には2・5兆―3兆円の売上高が必要で、今後さらに売上高を5000億―1兆円増やさなければならないという高い壁に挑む。堅調な国内市場の深耕に加え、これまで以上に大規模なグローバル展開が求められている。

 岩本敏男前社長体制と同様、新体制でも3人の副社長体制を維持している。人事本部長で事業戦略担当の柳圭一郎氏、NTTデータの主力事業である公共・社会基盤分野担当で法人・ソリューション、中国・APACもみる山口重樹氏、もう一つの主力事業である金融分野を統括し欧米、グローバルマーケティングも担当する藤原遠氏が務める。

 新体制が最初に取り組む大きな仕事が19年度から21年度までの新中期経営計画の策定だ。すでに新メンバーで策定に着手しているという。

 本間社長は「成長のドライバーは、デジタルとグローバルだ。これは一丁目一番地の戦略になる」としており、次期中期経営計画にもこのデジタルとグローバルが核となると予想される。

 ここでいうデジタルとは人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ(大量データ)、ロボティクスなどの技術の活用を意味する。

 例えば同社はNTTファシリティーズと超高層建物向けにAIを活用することで、従来の制振技術よりも大幅に揺れを低減させるなどの先進的なAI活用に取り組んでいる。NTTデータがこれまで得意としてきたシステム構築技術とデジタル技術を組み合わせ、顧客と連携しながら新たな市場を創出する狙いだ。

 特に国内では2020年まではIT需要が堅調だと予想される。IT投資も「守りのIT」から事業に直接貢献する「攻めのIT」へ変化しつつある。これまで圧倒的優位を見せていた公共・社会基盤や金融分野と異なり、NTTデータが苦手としていた法人・エンタープライズ分野のシェア拡大にデジタル技術が期待できる。本間社長も「製造業やサービス・小売り業などの法人分野は元気のいいお客さまが多い。デジタルや攻めのITで大きく支援できる」と意気込む。

大胆なグローバル戦略


 NTTデータが成長のドライバーと位置付けるのは「デジタルとグローバル」だ。特に2006年以降、大胆なグローバル戦略にかじを切っている。17年3月期の海外売上高は北米が2463億円、EMEA(欧州、中東、アフリカ)・中南米が3308億円だったのに対し、18年3月期は北米4720億円、EMEA・中南米が4232億円と大幅に増加している。19年3月期をゴールとする中期経営計画では海外売上高比率50%を目標に掲げている。

 グローバル戦略をけん引しているのはM&A(合併・買収)戦略だ。95年に米リビアを買収したのを皮切りに、08年はドイツのアイテリジェンスやサークエントを傘下に収めた。10年には米キーン(現NTTデータインク)を約1160億円で子会社化した。最も大きな投資だったのが16年に買収した米デルのITサービス部門(現NTTデータサービシーズ)。約3500億円を投じ、北米事業のさらなる強化に打って出た。もちろんM&A戦略だけではなく、海外事業の掘り起こしも重要であり、本間洋社長は「M&Aと自ら成長していくというビジネスの両方でグローバル戦略を拡大する」としている。

 買収した企業と一体感を醸成していくことも課題の一つだ。本間社長は「遠心力と求心力のバランスを大切にしている」と話す。同社はグローバルに連携する仕組みとして「グローバルアカウント」と「グローバルオファリング」を進める。アカウントでは、世界中に展開している顧客に対し、NTTデータも各グローバル拠点と連携をして高度なサービスを提供する。オファリングではグローバルの拠点で共創的なソリューションの募集や新たなサービスの創造を行う。この両軸でグローバルの連携を高めている。SI(システム構築)事業ではグローバルといいながら“グローカル”の場合も多い。本間社長は「地域性に配慮したローカルの仕事が重要で、オファリングが効果を出してくる」と語る。

 NTTデータが目指すのは、ITによる豊かで調和のとれた社会の実現だ。企業に対してはITを用いて事業を支援し、社会に対しては社会課題の解決に貢献する。本間社長は「自負しているのは、我々が手がけているコアのアプリケーションはお客さまの事業のビジネスモデルそのもの。社会にとってみると社会の仕組みそのもの」と強調する。

 国内外ともに人口減少、少子高齢化、環境問題、食料問題など“世界課題”ともいえる問題が生じている今、本間社長は「課題を解決することが我々のミッション。日本電電公社の中でコンピューター事業を始めてからこの軸はぶれていない」と胸を張る。

グローバルトップを目標に掲げるNTTデータ(本社)

(文=川口拓洋)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
歴史を背負い、本間体制での航海がスタートした。 (日刊工業新聞社・川口拓洋)

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